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選択的セロトニン再受容阻止薬 宮川晋 - 2002/09/06 10:43 -
4週間ぶりの病院。台風16号の暴風警報はまだ解除されてなくて、病院に向かう環状2号の路上にも、折れた木の枝やゴミバケツ、ダンボールやベニヤの切れ端とかさまざまなものが散乱しております。
沖縄に住み始めてから3回目の台風シーズンだが、今回はなかなか激しかったですね。ベランダの犬小屋、プラスチック製だから軽いことは軽いんだけども、それが二つとも飛んでほとんど手すりに引っかかってやっととまった。犬たちはもちろん室内に避難させていたけど、猫といっしょになって部屋中を駈け回るものだから、今回も私は一睡も出来ませんでした。
この台風は大東島のほうから真西に向かって本当北部に接近してきた。台風が東からやって来るというのもなかなか慣れない経験ではありますが、でもはじめのうちは本当に東から風が吹いてくるんですね。夜半に「目」にさしかかったんでしょう、風がふっとやんで、3時間後くらいに今度は激しい吹き返し、西からの風です。
この季節の台風はこんな風に、南東方向から沖縄にアプローチしてきて、大陸の直前で鋭角的に進路を変え、北東に向かっていくみたいですね。そう言えば去年の16号も、本島を通りすぎたあと久米島の上空で失速しておよそ2回転半ほどした後、なんと南に向かって石垣方面に抜けていった。断続的に2週間ほど仕事が休みになって、その間にアメリカでは大変なことが起こったのでした。ちょうど一年になりますね。

今では毎回の診察は5分くらい、もっぱら処方箋をもらうために出かけているようなものだけど、一応過去4週間の経過を報告。間の2週間がかなり不調でした。薬を飲み始めたときの、あの激しいだるさとはくらべものにならないが、やはり朝起きるのがかなりつらかったですね。明らかに全般に快方に向かっているのだとは思うのだけれど、やはりそれこそちょうど4週間周期くらいで、揺り戻しがあります。
本屋さんに行くと、驚くほどたくさんの「うつ病」関係の入門書が出ています。ある推計によれば、今では人口の10パーセントほどが罹患しているとも言われる、すごいポピュラーな病気なのだから、当然といえば当然でしょう。私もいくつか読んでみて、それなりに勉強はしたんですよ。
うつ病の「原因」といっても、もちろんストレスとかさまざまなものが関与しているのだから単純ではないだろうけど、神経伝達の化学物質である、ノルアドレナリンとセロトニンの分泌が不充分であることと因果関係がある事がわかっているらしいですね。したがって「うつ」の薬物療法はこれらの物質の分泌を助けることに主眼が置かれます。例えば、現在私が処方していただいている『パキシル』という薬は、「選択的セロトニン再受容阻止薬」というのに分類されているそうです。
本を読んでいて、自分とそっくりの症状が記述されていたり、自分の飲んでいる薬の名前が出て来たりすると、あ、これだこれだ、とばかりに、自分の捕まえた蝶を昆虫図鑑でみつけたときみたいに、 うれしくなってしまう。

それにしても、こんなたった40ミリグラムの小さな錠剤で、神経の情報伝達などというかなり根本的な人間の機能が左右されてしまって、『私』の気分とか感情といったものが、あっさり変わってしまうなんて、人間の体なんてどんなに複雑に見えても結局は、いくつかの化学反応と物理反応の必然性の支配する「器」なんだね、と、すがすがしい「敗北感」に教われます。

龍宮城だより