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ロサンジェルス・タイムス2000年5月19日
http://www.latimes.com/news/science/environ/20000519/t000047362.html

日本のジュゴンに何の罪がある?

合衆国軍隊との合意がうまく行けば、沖縄近海から、この気弱な海生哺乳類は消えてしまうかもしれない。

ソニ・エフェロン(タイムス)

東京:「ジュゴンを守れ!」と日本の環境保護活動家たちは叫ぶ。
合衆国軍事基地の移設計画は、日本における最後に残っているジュゴン、このフロリダのマナティの親戚、臆病者の絶滅危惧哺乳類をほんとうに絶滅させてしまうかもしれない、と彼らは警告している。
約2万7千人のアメリカ軍を駐留させている沖縄県民の不快感を軽減するための方策として、合衆国は1996年に普天間飛行場の日本への返還に合意した。ただし、移設先が用意されるならば。さまざまな思惑の入り乱れた選定作業を経て、日本政府は11月、辺野古という沖縄本島北東部のはずれにある過疎地域が新しいヘリ基地の建設地と決まったと発表した。
しかし環境保護運動家たちも科学者たちも、辺野古は日本におけるジュゴンの最後の生息域の只中に位置するという。泳ぎがのろく、嚇かされやすいこの生き物が、人や船舶の往来、建設工事、汚染、ヘリコプターの騒音といったものの中で生き延びれるとは考えられない、と彼らはいう。
ジュゴンはかつては東アフリカからインド、マレーシア、オーストラリアの北岸や南太平洋の多くの島に生息していた。彼らは暖かい海洋にしかすまない。沖縄はその北限を画する。
三重大学の海洋哺乳類研究者、カスヤ・トシオ氏によると、化石資料の示すところによると、かつて日本近海にも多くのジュゴンが住んでいたといわれており、第二次世界大戦以前は、食用として彼らの群れ全体をダイナマイトで爆破するという漁法も用いられていたようだ。彼らの食糧が枯渇するにつれ、いまでは魚網にかかっておぼれてしまうケースが多くなってきた。
ジュゴンの固体数は世界的には10万、そのうちの8万頭はオーストラリアに生息していると見積もられている。
しかし、科学者たちが恐れているのは、日本のジュゴンは、その生息域が辺野古の南北にわたるわずか32平方マイルの地域に限られているため、まもなく絶滅してしまうかもしれないということである。ほとんど調査がなされていない現段階ではあるが、沖縄近海の固体数は50以下であろうともいわれている。
「地球規模で見れば、(辺野古にヘリ基地を建設することも)危機的ではないとも言えよう。(しかし)問題となっているのは絶滅に瀕した、日本近海に住むジュゴンなのだ」とオーストラリアのグレート・バリア・リーフに近いジェームズ・クック大学の環境科学者にして、ジュゴン研究者であるヘレン・マーシュ氏はいう。
「もし日本近海のジュゴンを保護したいと日本が考えるならば、そして実はそれは世界が決めることではなく日本が決めることなのだが、沖縄の海草の生育を保全しなければならないし、航空基地を作る事はそのためにはならないでしょう」と彼女はいう。
成長すると長さが12フィート、体重は2千ポンドを越えるまでになるジュゴンは、厳格な菜食主義者である。この巨大な草食動物は、したがって起きているほとんどの時間を食糧摂取に費やさねばならないが、食事はたいがい夜間に行われ、この時船舶が航行すると彼らは食草のある藻場に近寄れなくなってしまうと考えられている。
ジュゴンの好む食糧は、沖縄近海に生育する海草である。しかし、この亜熱帯の島の海岸地域の建設工事の結果、土壌が海に流出してこの海草の多くが殺されてしまった、とカスヤ氏はいう。
ジュゴンは日本の天然記念物に指定されているというのに、政治的な思惑がそれに反する結果を生み出している。合衆国や国際条約ではジュゴンを絶滅危機種に指定しているが、日本の法律はまだこれを行っていない。1993年以降ジュゴンの捕獲は禁止されているが、その生育の保護や食草の保全を目的とする法律は制定されていない、と環境庁および水産庁の担当者はいう。
日本の内閣はすでに航空基地の辺野古への移設を承認している。しかしこの計画が「離陸」するにはなお数年を要するであろう。合衆国と日本の担当者間には、使用期限をめぐる食い違いがある。沖縄県知事は15年後に米軍が出て行くことを求めているが、ペンタゴンはこれに反対している。ヘリ基地が埋め立て地に建設されるのか、海上浮体に建設されるのかも決まっていない。
防衛庁関係者の一人ササヤマ・カズユキ氏によれば、辺野古は沖縄サイドによって、環境問題上に最も新基地にふさわしい場所として選定されたのだという。海洋環境の保全のためにすべての可能な方策が採られるだろうとも彼は述べる。
ジュゴンの保護を求める人々はこのような回答に満足しない。カスヤ氏はこう述べる。「野生生物の保護に関する日本の立場は、『有害だと証明されていないことはすべて許されている』というものだが、しかし私たちはこのような計画が『無害であることが立証されない限り有害とみなす』とすべきではないのか?

著作権はロサンジェルス・タイムスが保有する(2000年)。