プエルトリコはビエケス計画を、撃ち落とした!

イバン・ローマン(サン・フアン支局)オルランド・センティネル紙(2000,01,25) (抄訳)
サン・フアン(プエルトリコ):プエルトリコ政府はビエケス射撃場における爆撃演習再開についてのペンタゴンの最新の提案を、きわめて健全にも「一歩後退だ」として拒絶した。
ペドロ・ロセッジョ知事は支援者や政敵に取り囲まれながら、最新の提案を「受け入れがたい」とし、この問題についての対話の継続を希望すると述べた。
彼の側近で、ホワイトハウス及び国防省との折衝においてプエルトリコ代表を務めたアンヘル・モレイは、既に更なる討議のためにワシントンに呼ばれていると述べた。
「この提案の中には前進と呼びうる要素は何もないといわせてもらう」とモレイは知事の閣僚のテーブルを囲む25人の代表を前にして発言した。「むしろすべてのグループを代表して、それは後退だと呼ぼう。」
プエルトリコ政府及び島中の活動家達は昨年一年間を通じて、ビエケス内の射爆訓練場における米海軍の爆撃演習を永久に中止させることを求めてきた。プエルトリコ政府はまた全島の4分の3にあたる52平方マイルの米海軍占有地を、汚染を除去した上で返還することを求めてきた。
クリントン大統領は5年内に射爆場を閉鎖するという12月3日のペンタゴン提案と同じラインにたってきた。年間90日間の不活性爆弾(?)による演習は続けられ、その間に米海軍がビエケス住民にたいして海軍の駐留と実弾演習の再開を説得しつづけるというものだ。
1月24日月曜日に海軍はプエルトリコにホワイトハウスから回されてきた2部からなる提案を送り付けてきた。
第一部はプエルトリコ政府に住民の健康、騒音、自然保護関連のための金銭の提供を提案している。もし、不活性弾による演習をプエルトリコ政府が支持するならば…。
もう一つはビエケス住民に、経済的振興策を提示しようというものだ。もし彼らが海軍の実弾演習の再開に住民投票で支持を表明するならば…。
これまで海軍はこのような振興策をほのめかしていたに過ぎなかった。
住民投票で、ビエケス住民は実弾演習の再開と、海軍の5年以内の撤退との間の選択を迫られる。前者を選べば国防省は4千万ドルの地域振興策を議会に申請するだろう。振興策のすべての条項は、射爆場内の13の団結キャンプからすべての反対派を除去し二度と立ち入れなくすることが前提だと海軍は強調している。
住民がもう一つの選択肢を選べば、2005年3月1日までに海軍は撤退する。土地を連邦政府に引き渡し、演習をセイバのルーズベルトロード海軍基地(ビエケス演習場はその一部にあたる)に縮小して。
「海軍は3月までには、演習場を占拠している反対派は疲れてくるだろうと読んでるらしいけど、私が思うに3月にはもっと人が来ると思うよ。」小学校教師のアルバ・エンカルナシオンは言った。
海軍長官リチャード・ダンツィッヒの広報官であるブライアン・カリン司令官は詳細の言及は差し控えたものの、今回の提案はペンタゴンの12月の提案と同様のものであり、「依然として対話へのドアは開いているし、事態は流動的であると信じている。そうであって欲しい。」と述べた。
しかしプエルトリコのリーダー達は、クリントン氏はそろそろ「係争状態にある2者の間の調停者といった立場に立ちつづけるのを止め、より能動的なホワイトハウス及び大統領としての立場を明確化して欲しい」と求めている。

ビエケス基地問題に関するホワイトハウス会談が設定された

エイザベス・ベッカー ニューヨークタイムス(2000/01/26)(抄訳)
ワシントン1月25日:ホワイトハウスはプエルトリコ知事の要請に基づいて、ビエケス島における爆撃演習の再開に関する海軍との話し合いを加速させるために介入することに同意した。
この問題に関する住民投票を実施するという海軍の最新の提案を知事が拒否して以降、ホワイトハウスは昨夜知事の要請を受けプエルトリコの交渉担当者を木曜日にワシントンに呼び交渉を再開することとした。しかしホワイトハウスの担当官は基地の将来についての最終決定はペドロ・J・ロッセリ知事ではなくビエケス住民の住民投票に委ねるべきだとの海軍の見解に支持を表明している。
海軍は先週次のような提案を行った。すなわち3ないし18ヶ月の間に住民投票が行われ、そこで住民は実弾演習が再開されることを認める代わりに4千万ドルの地域振興費を受け取るか、あるいは5年以内に基地を閉鎖するかを選択することになる。3月1日までの爆撃演習一時停止は住民投票が終了するまで延長される、と行政当局者は述べている。
「この提案は前回のものより後退している。」と知事報道官のアルフォンソ・アギラールは言う。「我々にはほんの数週間しか与えられていない。3月の演習一時停止期限の終了までに決断するよう軍が大統領にせまっていることを我々は知っている。
大統領はプエルトリコ領内の小さな島であるビエケスでのすべての軍事演習を、海兵隊のジェットが監視塔を誤爆してプエルトリコ人の民間人警備員を殺してしまった4月以来、停止させている。この警備員の死はプエルトリコ人の抗議に火をつけ、基地内の土地を100人以上の人が占拠するという事態に至っている。
12月には大統領はビエケス島における実弾演習を停止させ、5年以内にすべての演習を終了させるよう軍に対して命じた。
ロッセリ知事は直ちにこの命令を不十分な妥協だとして拒絶した。プエルトリコはビエケスにおける爆撃演習の禁止を、法的に拘束力のある方法で行うことを求めているのだとして。
有力な政府筋の情報によるとこうして先の金曜日、海軍は対案、すなわち大統領の支持をもとりつけた住民投票案を提示したというわけだ。
住民投票案を、軍に対してはその計画を公表するチャンスを与え、ビエケス住民の意思が本当のところどこにあるのかを見る機会として我々は提案した、とホワイトハウスの要人は述べている。「プエルトリコ側は軍総司令官としての大統領がビエケスの住民の意思をも考量しながらも合衆国軍隊の即戦力を維持しなければならないことを理解する必要がある。」
第二次大戦以降、海軍及び海兵隊は900エーカーのビエケスの演習場を水陸両用艇による上陸演習、航空機からの射撃及び艦砲射撃を含む東海岸における唯一の包括的実弾演習場として使用してきた。これらの合同訓練の必要性から、海軍はこの演習地を極めて貴重なものと位置づけてきたが、一方でビエケスの住民は基地そのものが受け入れがたいと主張してきた。
ロッセリ知事は50年以上に渡るビエケスでの爆撃演習は、住民の間の高い失業率と高いガン発生率をもたらしただけでなく、島の野生生物やデリケートなサンゴ礁に対する深刻な打撃をもたらしたという。
海軍はビエケスの島民との関係において至らない点があったことを認め改善を申し入れてはいる。しかしプエルトリコの市民はすでにビエケス問題を大統領選挙及びプエルトリコ系住民が多数を占めるニューヨーク州の選挙の争点としはじめている。
下院の共和党は海軍を支持しもしプエルトリコが実弾演習再開を拒否すれば上院及び下院において30億ドルの施設であるルーズベルトロード基地を***する法案についての公聴会を開催しようとしている。
プエルトリコ側はその提案を見え透いたやり口として退け、木曜日の会談には海軍を含めないことを求めている。
「海軍と話すことはもうない。」とアギラール氏は言う。
木曜日にプエルトリコの国務長官アンヘル・モレイ氏はホワイトハウスのジョン・D・ポテスタ氏及び国防省の代表と会談する。

ジョージア大学の生態学者とサンゴ礁の専門家がプエルトリコ・ビエケス島沖に沈んだ船から爆弾を発見


ジョージア大学学内報
アーシンズ(ジョージア):ジョージア大学の生態学及び海洋科学教授ジェームス・ポーター氏はサンゴ礁の専門家でもあるが、彼は2人のダイバーとともにプエルトリコ・ビエケス島沖で2隻の沈没船と爆弾を発見した。 爆弾の存在とその他まだ船に残された何ダースもの腐食しかけたドラム缶の中にありうる有害物質について本日公にされた。
「私は長期的展望に立っている。」と長年にわたって世界中のサンゴ礁の死滅について研究してきたポーター氏は言う。「今私の心の中にある問いはいかにして地球上で最も美しい場所の保護を推し進めることができるか?だ」
プエルトリコ本島東端から望むことのできるこの島は、何年にもわたって論議の対象となってきたが、米海軍及び海兵隊が58年にわたって実戦訓練に使用してきた爆撃演習場で海兵隊パイロットの目標を誤って投下した爆弾によって民間人警備員が死亡して以来、その論議は活発化してきていた。数ヶ月にわたって合衆国政府との首脳会談が行われ、そのなかでクリントン大統領は、実弾演習場は再開しないことを約したが、同時に段階的な撤収期間として年間90日間、飛行士の投下技術の訓練のためコンクリートを詰めた「不活性」弾による演習を行う権利を留保している。
プエルトリコ政府及び宗教指導者達は直ちにこの妥協案を拒否し、九千人以上の島民を代表して抗議行動が開始された。抗議行動の参加者達は4月以来演習場の一部を占拠している。
ポーター氏がこの問題に関与しはじめたのは7月のことである。プエルトリコ政府が米海軍との交渉に際しての法的なアドバイスを得るためアトランタのキングアンドスポールディング社と契約し、同社がポーター氏及びバージニアの海底爆発物除去会社のジェームス・バートン氏、ニュージャージーの爆発物及び反応性物質会社のフレッド・ホーバーカンプ氏を雇ったのだ。プエルトリコ政府の要請によりポーター氏とバートン氏がサンゴ礁を検分するためにはじめてビエケスを訪れたのは7月31日であった。
「プエルトリコ人は、サンゴ礁にあいた穴はハリケーンのせいであり、島の回りには爆弾はないとの説明を受けている。われわれは一帯を精査し、サンゴ礁の穴はハリケーンによるものではないこと、また近辺には大量の爆弾が、400ヤード沖合には何百発という実弾の砲弾や爆弾が放置されていることが確認された。
プエルトリコ知事ペドロ・ロセッジョ氏と合衆国の担当者との交渉がワシントンで継続されていた時、プエルトリコ側はふたたび彼らに調査を依頼し、サンゴ礁への損害をさらに調べさせた。液体や固体を充填していると思われる多くのドラム缶を積載した2隻の船の残骸が発見されたのは、11月26日のこの調査に際してである。これらの船はわずか15ないし20フィートの水深にあり、船体に生育したサンゴの大きさに基づいてポーター氏が推定したところによれば10年ないし12年前に沈没したものと思われる。
ドラム缶からは明らかに内容物が海中にもれている。ホーバーカンプ氏は試料を採取し毒物が含有されているかを調べた。さらにポーター氏によると気体を圧縮充填したシリンダーが、何が含まれているかはわからないが、少なくとも一本見えた。
調査チームはハリケーンによって作られたとされているクレーターを磁気計と呼ばれる装置によって調査し、すべてのクレーターの壁面から「金属物質」あるいは弾丸の破片が検出され、ポーター氏によればこれによってクレーターが爆弾及び爆発物によって作られたことが確認されたという。
調査チームは沖合の船の残骸の場所を「ドラム缶のリーフ」、「ドラム缶の船」と呼んでいる。「ドラム缶のリーフ」エリアは150から200個のドラム缶が著しく色の褪せた船体から見ることのできる少なくとも長さ100フィート幅35フィートの船の残骸からなる。ポーター氏によるとこの地域はきわめて多くの実弾の砲弾や爆弾があるため著しく危険であるという。
「ドラム缶の船」エリアは船体が大きく二つに割れた残骸からなり、その船尾部分は長さ105フィート、船首部分は著しく崩壊していて少なくとも長さ15フィートである。チームの推定によればこの地域には900ないし1000のドラム間が、不発弾の間を縫って放置されているという。
「どちらの地域にも2種類のタイプの55ガロンのドラム缶がある。ねじ込み式の注ぎ口が付いたものとベルト式のふたの付いたものがあり、前者は液体用、後者は固体用と思われる。」とポーター氏は述べている。

ポーター氏の著作は近年特にフロリダにおけるサンゴ礁の減少に関する専門家として広く引用されている。また、彼の著作はサンゴ礁の生育と繁茂に関して新しい知見を与えてくれる。