黄金の花

黄金の花(こがねのはな)



黄金の花が咲くという
うわさで夢を描いたの
家族をふるさと、ふるさとに
置いて泣き泣き、出てきたの

素朴で純情な人たちよ
きれいな目をした人たちよ
黄金でその目を汚さないで
黄金の花はいつか散る

楽しく仕事をしてますか
寿司や納豆食べてますか
病気のお金はありますか
悪い人には気をつけて

素朴で純情な人たちよ
ことばの違う人たちよ
黄金で心を汚さないで
黄金の花はいつか散る

あなたの生まれたその国に
どんな花が咲きますか
神が与えた宝物
それはお金じゃないはずよ

素朴で純情な人たちよ
本当の花を咲かせてね
黄金で心を捨てないで
黄金の花はいつか散る

素朴で純情な人たちよ
体だけはお大事に
黄金で心を捨てないで
黄金の花はいつか散る

黄金で心を捨てないで
本当の花を咲かせてね

作詞:岡本おさみ 作曲:知名定男 うた:ネーネーズ 1994



 今日もまた「ヘリ基地反対協」の宣伝カーがこの曲を鳴らして走っていきます。これはもう名護の風景・「サウンドスケープ」の一部。
 あまりに悲しすぎるこの歌は、2年前の市民投票のとき以来、反対派のテーマソングになっているみたい。

 那覇の国際通りを巡回している横浜ナンバーの右翼の宣伝カーの人たちは、「普天間移設に反対する者たちは、北部振興の失敗の『責任』をどう取るつもりか?」とのたまっている。「今の憲法はアメリカ軍に押し付けられたものです」と言った舌の根も乾いてないと思うんですけど、それはそうとして、実際何十億、何百億という「黄金」がこんな小さな島のこんな小さな町に流れ込んでくるとなれば、人々の目の色が変わってしまうのも当然ではありましょう。

 「黄金で心を汚さないで」すめばいいんですけどね。「素朴で純情な人たち」でいつづけられたらいいんですけどね。でも、この島の人たちだけが、この町の人たちだけが、素朴で純情でいなければならないなんて、きびしいですよね。



 アメリカ「連邦」内・北マリアナ諸島のティニアン島。人口2,600人の島の3分の2の面積がすでにアメリカ軍に貸し付けられていて、近い将来ありうべき米軍の沖縄からの撤収に備えて、アジア経済の冷え込みによる観光収入の激減を補填すべく、基地の誘致がはじまっているそうです。南太平洋の島々にくわしい友人が教えてくれました。
 北朝鮮と中国、ミャンマー、インドネシアのアチェやイリヤン・ジャヤ、スリランカのジャフナ半島、インド・パキスタン国境からアフガンまで、およそあらゆるアジアの「敵性国家」と紛争地域に直ちに介入できるまたとない「軍事的重要性」を持ってしまったことは、ティニアン島の人たちの「責任」ではありません。「太平洋の要石(keystone of the Pacific)」であることが沖縄の「罪」ではないのと同様に。

 「お金で魂を売った」とか、「人殺しに荷担する」とか、もう言わないで!
 そんなことばで言い尽くされるほど、世界は単純じゃないと思うの。「黄金の花」の悲しみは、もっと深いと思うの。



 辺野古のキャンプ・シュワブのゲートで守衛をしている沖縄人(うちなんちゅー)のおじさん。「ゲートの写真を撮ってもいいですか?」ってきいたら、「いいでしょうねぇ」って。その苦笑いが忘れられない。



 「あなたのお仕事は人殺しですか?」「あなたはお金で心を売ったのですか?」いえいえ、わたしがそうでないとしても、それは単なる偶然にすぎません。

 ネーネーズはこの秋解散してしまいました。この悲しい歌をあなたもきいてみてください。「コザdabasa」というCDに収められています。ライ・クーダー、ジム・ケルトナー等の豪華ミュージシャンが参加しています。


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1999/12/29 宮川晋 miyagawasusumu@hotmail.com