龍宮城だよりvol.2


 
 もう11月も半ばだというのに、Tシャツ一枚にゴムぞうりで歩いている人もいる。
 それでも数日前に台風みたいなすごい風の日があって、それ以来ちょっとは涼しくなったかな?こっちの人はめっぽう寒さに弱いみたいで「きょうはさむいねー」なんて言ってる。沖縄にだってちゃんと冬はあるんだぞ、寒くなったのがちょっと自慢みたいだ。
 こちらに来てから一月あまり、勤めている予備校の4階に居候させてもらっているが、昼まで眠って夜はオリオンビールと泡盛漬けの日々だから、実はあんまり変わりばえはしない。とはいってもヘリポートの問題をめぐっていやおうなく騒がしくなりつつある今日この頃。
 先日もデモがあった。東海岸の辺野古と嘉陽からそれぞれ二手に分かれて西海岸の名護市中心部まで、10km以上あるだろうか、延々と歩くわけだ。この予備校のすぐ脇の道を長い隊列が通り過ぎたのはもうすっかり夕方だった。デモの目的地、市役所前の集会で「地元の若者代表!」ってことで演説をすることになっているM君はうちの予備校の生徒で、彼はよせばいいのに演説の原稿書いてみたり、シャツの丈が短くて腹が出て見えるんじゃないかとしきりに気にしてみたり、朝からぜんぜん落ち着きがない。
 仕事が終わってからやってきた。さっきまで予備校にいた高校生達もちらほら。集会場の外では横浜ナンバーの右翼の街宣車が2台、市役所の周りをぐるぐる回りつづけて、中からおっさんがどういうわけか関西弁で怒鳴り散らしていたりして物騒な雰囲気をかもし出している。
 M君の演説はとてもよかったよ。ちょっと優等生っぽかったけどね。
 沖縄の高校生は「意識が高いんだ」みたいなありがちな感心のしかたをしないでね。不幸や困難に直面したら人は強くなれるかもしれないけれど、強くなる必要もなければ強くならなくてもいい「自由」もあるのさ。

 この子達に、おしゃれやセックスやケータイ着メロやそんなこと以外頭空っぽな、どこにでもいる普通の高校生でいつづける「権利」を保障してください。
 この町の人々を、この島の人々を「二級市民」あつかいするのは、もうやめてください。
 先月住民登録したばかりの「クサリナイチャー(腐れ内地人)」だけど、一名護市民としての、お願いです。                            




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1999/11/17 宮川 晋 miyagawasusumu@hotmail.com