金属結晶の構造
「単位格子」とは、その結晶の性質を失わない最小の「繰り返し単位」を言う。
体心立方格子
では、立方体。
1
単位格子に含まれる原子の数
は、
立方体各頂点にある原子は、隣接する8格子に共有されているから、
と、数える。これが8頂点にある。
立方体の中心にある原子1個は、この格子にのみ含まれているから、そのまま1と数える。
したがって、合計、
×8+1=2
各原子が格子にぎっしりつまった硬い球体と仮定して、その半径を求め、「
充填率
」を計算する。
立方体の一辺の長さを
a
とすると、立方体の中心にある原子と、それに隣接する4個の原子を含む断面は、縦
a
、横√2
a
の長方形で、その対角線は√3
a
。
この対角線に沿って3個の球が隙間なく隣接しているから、これを4で割ったものが半径となる。√3
a
/4。
半径 √3
a
/4 の球2個が、一辺
a
の立方体に含まれているから、「
充填率
」は以下のような計算で、約68%になる。
面心立方格子でも、立方体。
1
単位格子に含まれる原子の数
は、
立方体各頂点にある原子は、隣接する8格子に共有されているから、
。これが8頂点にある。
各面の中心にある原子1個は、隣接する2格子に共有されているから、
。これが6面にある。
したがって、合計、
×6+
×8=4
同様に球の半径を求め、「
充填率
」を計算する。
立方体の一辺の長さを
a
とすると、各面の正方形の対角線は、√2
a
。
この対角線に沿って3個の球が隙間なく隣接しているから、これを4で割ったものが半径となる。√2
a
/4。
半径 √2
a
/4 の球4個が、一辺
a
の立方体に含まれているから、「
充填率
」は以下のような計算で、約74%となる。
一方、六方最密充填では、正六角柱の中に、まったく同じ構造が3個含まれている。第2層目の3個の球を、1個ずつ含む単位で、底面を隣り合う辺のなす角が60°、120°であるような「ひし形」とする四角柱である。
1
単位格子に含まれる原子の数
は、
第2層目の1個はそのまま、
上面下面の「ひし形」の60°の頂点では金属原子は12個の格子に共有されている、このような原子が4個、
120°の頂点では6個の格子に共有、このような原子も4個、
したがって、合計、1+(1/12)×4+
×4=2
「充填率」の計算。ここでは逆に球の半径を
a
として、この四角柱の体積を求めることにする。
底面の「ひし形」の一辺は2
a
。
高さは、一辺2
a
の正四面体の高さ2個分である。
1辺2
a
の正四面体の高さを求める。正四面体を、その2つの頂点とそれを含まない辺の中点を通る平面で切る。断面はニ等辺三角形だが、その頂角をθとすると、余弦定理から、
(2
a
)
2
=2(√3
a
)
2
-2(√3
a
)
2
cosθ
cosθ=
したがって、正四面体の高さは、
√3
a
sinθ=
こうして以下のように計算された「充填率」は、面心立方と同じ、74%となる。
体心立方格子
面心立方格子
六方最密充填
「面心立方格子」と、「六方最密充填」の「充填率」は、ともにπ/3√2、約74%という数値で奇妙に一致してしまったのには、もちろん「ウラ」がある。
「最密構造」の根拠が「正四面体構造」にあるらしいことはわかっている。「六方最密充填」が、正四面体を単位にしていることは明らかだ。一見正四面体とは何にも関係なさそうな「面心立方格子」もどこかで正四面体と関係を持っているのだろうか?
多数のボールを平面的な「最密構造」、つまり「蜂の巣」型に並べる。その隙間に第2層目を積む。このとき、実は方法は2通りある。隣接する2つの正三角形の重心にどちらもボールを置くことはできないからだ。このことが、第3層目を積むときに、どうしても合同ではない2種類の積み方を生み出してしまう。第1層目と同じ配置が、第4層で初めて繰り返される形式(これが面心立方格子になる)と、第1層と第3層が同じ配置になる形式(これが六方最密充填)。
面心立方格子
(立方最密充填)
六方最密充填
第1層
第2層
第3層
全体
次の図のように、面心立方格子を斜めから眺めると、たしかに正六角形や正三角形が隠されていることが分かる。