化学入門講座

化学入門講座・｢化学反応式｣を作る

化学反応には、2種類しかない！

酸化還元反応電子のやり取りをともなう反応。

酸化還元反応でない反応電子のやり取りをともなわない反応。
｢元素｣には、2種類しかない！

金属元素 周期表の左下側

非金属元素 周期表の右上側
では、｢元素｣と｢元素｣の結合の仕方には、3種類しかない！

｢金属元素｣と｢金属元素｣金属結合

｢非金属元素｣と｢非金属元素｣共有結合

｢金属元素｣と｢非金属元素｣ イオン結合

化学反応式の作り方(もちろん、簡単に作れるものしか、あつかわない！)
- 酸化還元反応ではない反応
  - ほとんどが、｢酸・塩基｣反応である。
    
    酸水の中で電離して水素イオン(H⁺)を出すもの
    
    塩基水の中で電離して水酸化物イオン(OH^-)を出すもの
    - 「電離」とは、イオンに分かれること。
    - ｢酸｣になる物質は、Hを含んだ｢共有結合｣の物質で、そのHが｢取れる｣と思えばよい。
      ｢電離｣しやすい｢酸｣が、強い酸で、希塩酸(HCl)、希硫酸(H₂SO₄)、希硝酸(HNO₃)はすべて強い酸
    - ｢塩基｣になる物質は、OHと金属元素がつながった｢イオン結合｣の物質で、OHと金属が｢分かれる｣と思えばよい。
      ｢電離｣しやすい｢塩基｣が、強い塩基で、
      水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、
      水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)、水酸化バリウム(Ba(OH)₂)、
      はすべて強い塩基
  - 水素イオン(H⁺)と、水酸化物イオン(OH^-)が、１個ずつつながって、｢水｣ができるのが、中和反応。
    1. 希塩酸と水酸化カルシウムの中和反応。
    2. 希硫酸と水酸化ナトリウムの中和反応。
  - イオンの｢組み合わせ｣がかわるだけの反応(例えば、沈殿形成)。
    - ｢沈殿｣は、水に溶けないもののことだ。
    - 水に溶けるかどうか？は何によって決まるか？
      水という分子(共有結合の物質)は、酸素と水素の｢電子を引き寄せる力(陰性)｣が大きく異なるので、大きな｢電気的な偏り(極性)｣をもっている。
      だから、同じように｢電気的な偏り｣をもっている物質は、水に溶けやすい。
      ｢イオン｣は極端に大きな｢電気的な偏り｣をもったものだから、水に溶けるものが多い。
      ところが、特別な組み合わせのイオンは、イオン同士が引き合う力が大きすぎて、水に溶けられない。
    1. 硝酸銀水溶液に食塩(塩化ナトリウム)を加えたら、沈殿ができた。
  - (酸化還元反応によらない)分解反応
    - ｢酸化還元反応｣は、電子のやり取りをともなうから、原子の構造が変化する｢激しい｣変化である。
      電子のやり取りをともなわず、構成元素が、その性質をあまり変化させないまま、分解する反応もある。
    - 出来上がる物質の種類を知っていれば、係数を合わせるだけで、作ることができる。
    1. 炭酸水素ナトリウムを加熱分解したら、気体の二酸化炭素と水が発生し、炭酸ナトリウムの個体が残った。
      
      NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂
      
      左辺右辺
      
      Na
      
      C
      
      H
      
      O
- 酸化還元反応反応
  - 酸化還元反応は、｢電子のやり取り｣をともなう反応である。
    
    酸化剤 電子(e^-)を、相手から受け取るもの
    
    還元剤 電子(e^-)を、相手に与えるもの
  - 電子を与えたか、受け取ったかは、どうしてわかるのか？・・・酸化数の変化を調べる。
    
    酸化数が増える負の電荷(e^-)を、相手に与えたから
    
    酸化数が減る負の電荷(e^-)を、相手から受け取ったから
  - では、酸化数は、どうやって調べるのか？
    - 隣接する原子のうち、より｢陰性｣の強い(周期表の｢右上｣側)元素の方に、電子を｢割り当てる｣、
      という方法で計算するが、ここではそれに深入りしないでも作れる反応式のみをあつかうことにする。
  - ｢酸化還元反応｣では、電子が過不足なくやり取りされる。
    - ｢還元剤｣の放出した電子の個数と、｢酸化剤｣の受け取った電子の個数を、等しくする。
    1. アルミニウムに希硫酸を加えたら、気体が発生して、溶けた。
      - 酸化剤は希硫酸から発生した｢水素イオン(H⁺)｣で、
        これが｢水素の気体(H₂)｣になる。
      - 還元剤は｢アルミニウム(Al)｣で、
        これが｢アルミニウムイオン(Al³⁺)｣になる。
      - 還元剤が放出した電子(e^-)が、酸化剤に、
        過不足なく受け取られるには？
  - 有機化合物の燃焼
    - ｢燃焼｣は、熱と光を発して酸素と化合することだから、代表的な｢酸化還元反応｣だが、
      ｢有機化合物｣の多くは、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)だけでできているから、
      これが完全燃焼すると、二酸化炭素(CO₂)と水(H₂)しかできない。
    - 出来上がる物質がわかっているから、係数を合わせるだけで、作ることができる。
    1. エタノール(CH₃-CH₂-OH)の燃焼。
      
      C₂H₆O + O₂ → CO₂ + H₂O
      
      左辺右辺
      
      C
      
      H
      
      O
｢化学反応式｣を用いて、計算する。
- ｢化学反応式｣の係数は、反応・生成する｢物質量(mol)｣の、比を表している。
  だから、計算には、｢比例式｣をたてるのが原則。
- では、｢物質量(mol)｣はどうやって計算するか？
  
  固体質量[g]を、構成元素の｢原子量｣の和[g/mol]で、割る。
  
  液体濃度[mol/L]に、体積[L]を、かける。
  
  気体標準状態での体積[L]を、22.4[L/mol]で、割る。
  - ｢原子量｣の決め方。
    自然界に普通に存在する炭素¹²Cは、
    - 6個の｢陽子｣
    - 6個の｢中性子｣
    - 6個の｢電子｣
    で、できているが、このうち、
    - ｢陽子｣と｢中性子｣の質量は、ほぼ同じ。
    - ｢電子｣は、それらに比べると2000分の１くらいに軽いから｢無視｣できる。
    だから、¹²C、一個の質量は、｢なにか｣の12倍のはずだ。
    でも、あまりにも軽いから、｢まとめて｣量ることにした。
    ¹²Cが、集まって、ちょうど12gになる集団を｢1モル(mol)｣と呼ぶことにした。
    その集団には、｢アボガドロ数｣6×10²³個の¹²C原子が含まれている。
  - どんな気体でも、標準状態(摂氏0度、1気圧)に保つと、｢1モル(mol)｣が22.4Lの体積を占める。
1. 水酸化ナトリウムxgを水に溶かして500mLとした。
  この水溶液と中和する、0.1mol/L希硫酸は、何mLか？
2. アルミニウムygを十分な量の希硫酸に溶かした。
  発生した気体の体積は標準状態で、何Lか？
3. エタノールzgを完全燃焼させたとき、
  発生する二酸化炭素、必要な酸素の体積は、標準状態で、それぞれ何Lか？
  また、このとき質量何gの水が発生するか？

酸化還元反応	電子のやり取りをともなう反応。
酸化還元反応でない反応	電子のやり取りをともなわない反応。

金属元素	周期表の左下側
非金属元素	周期表の右上側

｢金属元素｣と｢金属元素｣	金属結合
｢非金属元素｣と｢非金属元素｣	共有結合
｢金属元素｣と｢非金属元素｣	イオン結合

酸	水の中で電離して水素イオン(H⁺)を出すもの
塩基	水の中で電離して水酸化物イオン(OH^-)を出すもの

酸化剤	電子(e^-)を、相手から受け取るもの
還元剤	電子(e^-)を、相手に与えるもの

酸化数が増える	負の電荷(e^-)を、相手に与えたから
酸化数が減る	負の電荷(e^-)を、相手から受け取ったから

固体	質量[g]を、構成元素の｢原子量｣の和[g/mol]で、割る。
液体	濃度[mol/L]に、体積[L]を、かける。
気体	標準状態での体積[L]を、22.4[L/mol]で、割る。

	左辺	右辺
Na
C
H
O

	左辺	右辺
C
H
O