1. 2次の正方行列A,Bに対して、
    AB=Oただし、AOかつ、BO
    となるものが存在するとき、
    A,Bはいずれも逆行列をもたないことを示せ。

  2. 2次の正方行列Aに対して、
    Aが逆行列をもたないならば、
    AB=Oただし、AOかつ、BO
    となる2次の正方行列Bが存在すること、
    また、
    B'A=Oただし、AOかつ、B'O
    となる2次の正方行列B'が存在すること、
    を示せ。

i,iiは互いに「逆」の命題である。
[証明]
  1. 「背理法」による。

    2次の正方行列A,Bに対して、
    AB=Oただし、AOかつ、BO となるものが存在し、かつ、
    Aが逆行列A-1をもつと仮定する。

    AB=Oの両辺に、左からA-1をかけて、
    A-1AB=A-1O
    EB=O
    B=O
    これは、BOの仮定に反する。
    よって、Aは逆行列をもたない。

    2次の正方行列A,Bに対して、
    AB=Oただし、AOかつ、BO となるものが存在し、かつ、
    Bが逆行列B-1をもつと仮定する。

    AB=Oの両辺に、右からB-1をかけて、
    ABB-1=OB-1
    AE=O
    A=O
    これは、AOの仮定に反する。
    よって、Bは逆行列をもたない。

    • [準備]「連立1次斉次方程式」の「非自明解」問題
      2次の正方行列Aに対して、x,yに関する連立1次斉次方程式(定数項がない1次方程式)

      が、

      以外の解(非自明解)をもつ必要十分条件は、Aが逆行列をもたないことであることを示せ。
      • が、 以外の解をもつならば、Aは逆行列をもたないことを示す。
        が、 以外の解をもち、かつ、Aが逆行列A-1をもつと仮定する。
        両辺に左からA-1をかけて、

        すなわち、

        これは、仮定に反する。よって、Aは逆行列をもたない。

      • Aは逆行列をもたないならば、 が、 以外の解をもつことを示す。
        Aが逆行列をもたないことは、その行ベクトル同士が1次従属であることと同値である。

        と書くことができる。

        k10に対して、は、明らかにの解である。
        a,bがともに0であるとき、この解はとなるが、
        このときはA=Oであるので、任意の(x,y)が解となり、この中からでないものを見つけることができる。




    • 2次の正方行列Aに対して、
      Aが逆行列をもたず、AOであるとき、
      と書くことができる。ただし、a,bの少なくとも一方、p,qの少なくとも一方は0ではない。
      このとき、
      k10、k20に対して、は、明らかにの解である。
      したがって、は、AB=Oを満たす。
      また、
      t10、t20に対して、は、明らかにの解である。
      したがって、は、B'A=Oを満たす。
      以上、示された。