(1)について
ここで定義されている[
,
]は、
2つのベクトルを隣接する2辺とする「平行四辺形の面積」をあらわしているようにも、
以下に述べる「ベクトルの外積」の、「大きさ」、をあらわしているようにも見えるが、
ちょっと困った点は、
θ
が、「反時計回りに測った角」と向きが指定されていることだ。
0
θ
π
ならば、sin
θ
0 だから、「面積」とも「大きさ」とも呼べるが、
π
θ
2
π
では、sin
θ
0 と、不の値になってしまうから、「面積」、「大きさ」とは呼べない。
2つのベクトルのうちの一方を回転して、重ね合わせるには、かならず2つの方法があり、その回転角を
θ
とすると、
一方は、0
θ
π
他方は、
π
θ
2
π
に当然なるから、ベクトルの「なす角」は、かならず小さい方をとる約束になっているのだ。
この問題は、当然ベクトルの「外積」からアイディアを得て作られているから、まずそれから説明する。
ベクトルの掛け算には、2種類あって、
掛け算の結果が「スカラー」になる「内積(スカラー積)」、
(これは物理学では「仕事」の定義に用いられる)と、
掛け算の結果が「ベクトル」になる「外積(ベクトル積)」、
(これは物理学では「力のモーメント」、「面積速度」、「フレミング左手の法則」などに用いられる)が、
ある。
「外積」ベクトルの、
「大きさ」は、2個のベクトルを隣接する2辺とする平行四辺形の面積であり、
「方向」は、「右ねじの法則」によって、以下のように定める。
大学で学ぶ「線形代数学」では、ベクトルの表示は高校の教科書のように矢印を載せた記号ではなく「太字(ボルド体)」を用いるから、ここもそれに従うと、
ベクトルの外積
ベクトル
a
,
b
のなす角を
θ
とすると、
ただし、
n
は、
a
が
b
に重なるように最小の角度で回転したとき、
その回転を右ねじの回転とみなして、右ねじの進む方向の単位ベクトル
上の図のように、回転して重ねる方法は二つあり、ここでは「最小の角度」と指定しているが、実は指定しなくても、
θ
が
π
を超えれば、sin
θ
が負になってしまう代わりに、
右ねじ進行方向の単位ベクトル
n
が逆向きになって、負と負が打ち消されて正になる仕掛けなのだ!
「外積」の大きな特徴は、
どちら「を」どちら「に」重ねる、と「順序」が指定されているから当然、
交換法則が成り立たない
、
順序を逆にすると、符号が反転する、ことと、
θ
が0ならsin
θ
が0になるから、
同じものの積は0になる
、こと
だ。すなわち、
x
,
y
,
z
各方向の単位ベクトルをそれぞれ
i
,
j
,
k
とすると、
したがって、「外積」の成分表示は、次のようになる。
θ
を「最小の回転角」と指定すれば、sin
θ
が負になることはないから、
「外積」ベクトルの大きさ、|
a
×
b
|=
x
1
y
2
-
x
2
y
1
としてよいのである。
とすると、
右辺は、
a
,
b
をそれぞれ行ベクトルとする2次の正方行列
の行列式であるから、
k
は単位ベクトルであるから、
ところが、困ったことにこの問題では、
θ
が
π
を超えることがあるから、
x
1
y
2
-
x
2
y
1
も負になりうるのだ!
もう一つ「面積」というアプローチはどうか?
と、
θ
を
π
以内に指定すると、
となり、成分表示にすると、
とよく似た式を得ることが出来るのだが、ここでも、絶対値記号が付いてしまっているから、それをはずす場合分けなどを考慮せざるを得ず、うまくいきそうにない。
ベクトル
,
のそれぞれが、
x
軸となす角のうち、どちらが大きいか?、とか、その差が
π
より大きいか?、などという面倒なことを考えずに済む方法はないだろうか?
これでどうだ?、三角関数の加法定理で、あっさり証明できた!
とおく。
とすると、今度は、負の角度まで出てきてしまうが、もし負になったなら、以下のように「周期関数性」を利用して、正の範囲に収めてしまうこともできる。
これを用いて、
この値は、正にも負にもなりうる値である。
に対して、
であるから、
以上、示された。
(2)について
であるから、(1)の結果より、
ここで、次のような3つの「公式」を証明しておく必要がある。
に対して、
したがって、
すなわち、
したがって、
ここで、
であるから、
したがって、
よって、