1. [命題]  2以上の整数a,bに対して、
    PQ
    ab-1が素数ならば、a=2であり、かつ、bは素数である
    [対偶]  2以上の整数a,bに対して、
    ¬Q¬P
    a=2でないか、または、bは素数でないならば、ab-1は素数でない

    • 「素数である」は、「1とそれ以外に約数をもたな・い・」と、否定文でしか定義できない言葉であるから、肯定文に転換しなければ証明できない。
    • 命題の結論部分を否定から肯定に転換するには、「背理法」と「対偶」のいずれも用いることができるが、条件部分を否定から肯定に転換するには、「対偶」しかない。


    =
    [命題] [背理法] [対偶]
    「AならばB」
    が真である
     Aであり、かつ、
    Bでなければ、
    矛盾が生ずる
     「¬Bならば¬A」
    が真である

    ここで、
    • P : ab-1が素数であること
    • A : a=2であること
    • B : bが素数であること
    とすれば、証明したいのは、 である。ここで、
    であるから、
    その「対偶」をとると、 、「ド・モルガンの法則」から、





    さらに、
    であるから、
    すなわち、
    1. a=2でないならば、ab-1が素数でないこと、かつ、
    2. bが素数でないならば、ab-1が素数でないこと、
    を示せばよいことがわかった。
    [証明]
    1. a2ならば、
      f(x)=xb-1とおくと、
      f(1)=1b-1=0であるから、
      f(x)は(x-1)で割り切れる。すなわち、ab-1は(a-1)で割り切れる。
      ここで、bは2以上の整数であるから、aba、すなわち、ab-1a-1
      したがって、ab-1はそれ自身以外の数a-1を因数にもつ。
      ここで、a2すなわち、a-11であるから、
      ab-1はそれ自身と1以外の因数a-1をもつことになり、素数でないことが示された。
    2. bが素数でないならば、
      すなわちb=lmを満たす、いずれも1以外の正の整数l,mが存在する、ならば、
      ab-1=alm-1は(al-1) , (am-1)を因数にもつ。
        なぜなら、
      • f(x)=xm-1とおくと、f(1)=1m-1=0であるから、f(x)は(x-1)で割り切れる。
        すなわち、alm-1は(al-1)で割り切れる。
      • g(x)=xl-1とおくと、g(1)=1l-1=0であるから、g(x)は(x-1)で割り切れる。
        すなわち、alm-1は(am-1)で割り切れる。

      • l1 , m1であるから、al-11 , am-11
        なぜなら、もし、al-1=1 , am-1=1、すなわち、al=2 , am=2、ならば、これはa=2、かつ、l=m=1、のときに限られるからである。
      • l1 , m1であるから、al-1alm-1 , am-1alm-1
      よって、ab-1はそれ自身と1以外の因数(al-1) , (am-1)をもつことになり、素数でないことが示された。










  2. [命題]  2以上の整数a,bに対して、
    PQ
    ab+1が素数ならば、b=2cとなる整数c
    少なくとも一つ、存在する
    [対偶]  2以上の整数a,bに対して、
    ¬Q¬P
    いかなる整数cに対しても、
    b=2cとならない
    ならば、ab+1は素数でない

    • さて、「対偶」をとったおかげで、「素数である」と言う「否定文」を回避することはできたが、条件部分¬Qが「いかなる整数cに対しても、
      b=2cとならない」とあらたに「否定文」を含むようになってしまった。
      この部分を多少書き換えないと、大変扱いにくそうである。
      • Qは、「bは2以外の素因数を、決してもたない」という内容である。ならば、
      • ¬Qは、「bは2以外の素因数を、少なくとも一つ、もつ」になる。
    • ところで、f(x)=xm+1に対しては、f(-1)=(-1)m+1であるから、
      m奇数のときのみf(x)が(x+1)で割り切れると断定できる。
      このロジックを使いたいので、「b奇数を因数にをもつ」と、いいたい。
      2以外の素数はすべて奇数であるから、
      • ¬Q:「bは2以外の素因数を、少なくとも一つ、もつ」、は、
      • ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、と、
      書き換えてもよさそうである。無論、奇数には素数でないものも含まれるが、それらはすべて奇数の素数のみからなる合成数、であるから、
      • ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、ならば、
      • ¬Q:「bは奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、
      といえる。すなわち、
      • ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、は、
      • ¬Q:「bは奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、
      の「十分条件」である。そこで、証明すべき命題として、次の形を採用する。

    [対偶]  2以上の整数a,bに対して、
    ¬Q¬P
    bは1以外の奇数の因数を、
    少なくとも一つ、もつ
    ならば、ab+1は素数でない

















    [証明]
    bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつから、
    正の整数l,mをもちいて、
    b=(2l+1)m
    と書くことができる。
    ここで、f(x)=x2l+1+1とおくと、f(-1)=0であるから、f(x)は(x+1)で割り切れる。すなわち、
    (am)2l+1+1は、am+1で割り切れる。
    • ここで、l0であるから、am+1(am)2l+1+1
    • また、am+10
    すなわち、(am)2l+1+1は、1でもなく、それ自身でもない因数am+1をもつから、素数でない。
    すなわち、ab+1は素数でない、ことが示された。