自然数a,bがあり、
(a,b)=1、すなわち、a,bは互いに素であるとする。
このとき、方程式、
ax+by=1
を満たす、0でない整数解(x,y)が無数に存在する。
その中で、0<|x|<b,0<yaとなるものと、
0<xb,0<|y|<aとなるものとが、各一組ずつ存在する。
[証明]
  1. 2x+3y=31・・・(ア)
    (2,3)=1であるから、2x'+3y'=1は整数解をもつ。
    得られた(x',y')に対して、(x,y)=(31x',31y')である。
    2x'+3y'=1を解く。・・・(イ)
    x',y'の係数2,3を「ユークリッド互助法」により、次第に小さくし、最終的にはどちらかを1に帰着させる。
    (2,3)=1、すなわち、2と3は互いに素であるから、かならずこれは可能である。
    2x'+(2×1+1)y'=1
    2(x'+y')+y'=1
    こうして、第2項の係数が1となった。
    明らかに、x'+y'=0,y=1は、解である。
    この連立方程式を解くと、
    (x',y')=(-1,1)
    これは(イ)の無数に存在する整数解のうちのひとつの解(特殊解)である。
    ちなみにこれは、x'が絶対値において3より小さい正数であり、かつ、y'が2より小さい正数である特殊解である。
    (イ)に代入して、辺々引くと、
    2x'+3y'=1・・・(イ)
    2(-1)+3・1=1・・・(ウ)
    2(x'+1)+3(y'-1)=0・・・(イ)-(ウ)
    すなわち、
    2(x'+1)=-3(y'-1)
    ここに、(2,3)=1であるから、
    x'+1=-3k
    y'-1=2k
    すなわち、
    (x',y')=(-3k-1,2k+1)
    無論、k=0のときが、上の、
    x'が絶対値において3より小さい正数であり、かつ、y'が2より小さい正数である特殊解、
    (x',y')=(-1,1)
    である。
    では、
    x'が3より小さい正数であり、かつ、y'が絶対値において2より小さい正数である特殊解、
    の方はどうか?
    k=-1とすればよい。すなわち、
    (x',y')=(2,-1)
    (ア)に戻ると、解は次のように書ける。
    (x,y)=(31(-3k-1),31(2k+1))
    もう少しシンプルな表現にしたい。k'=31kとおくと、
    (x,y)=(-3k'-31,2k'+31)
    さらに、たとえば、k''=k'+15とおくと、
    (x,y)=(-3(k''-15)-31,2(k''-15)+31)=(-3k''+14,2k''+1)
    または、たとえば、k'''=k'+10とおくと、
    (x,y)=(-3(k'''-10)-31,2(k'''-10)+31)=(-3k'''-1,2k'''+11)
    ここでも、端数の絶対値を31より小さくする方法が、ただ2通り、存在するのである。
    • (1)11x+13y=23・・・(ア)
      (11,13)=1であるから、11x'+13y'=1は整数解をもつ。
      得られた(x',y')に対して、(x,y)=(23x',23y')である。
      11x'+13y'=1を解く。・・・(イ)
      x',y'の係数11,13を「ユークリッド互助法」により、次第に小さくし、最終的にはどちらかを1に帰着させる。
      (11,13)=1、すなわち、11と13は互いに素であるから、かならずこれは可能である。
      11x'+(11×1+2)y'=1
      11(x'+y')+2y'=1
      (2×5+1)(x'+y')+2y'=1
      2{5(x'+y')+y'}+(x'+y')=1
      2(5x'+6y')+(x'+y')=1
      こうして、第2項の係数が1となった。
      明らかに、5x'+6y'=0,x'+y=1は、解である。
      この連立方程式を解くと、


      (x',y')=(6,-5)
      これは(イ)の無数に存在する整数解のうちのひとつの解(特殊解)である。
      ちなみにこれは、x'が13より小さい正数であり、かつ、y'が絶対値において11より小さい正数である特殊解である。
      (イ)に代入して、辺々引くと、
      11x'+13y'=1・・・(イ)
      11・6+13(-5)=1・・・(ウ)
      11(x'-6)+13(y'+5)=0・・・(イ)-(ウ)
      すなわち、
      11(x'-6)=-13(y'+5)
      ここに、(11,13)=1であるから、
      x'-6=-13k
      y'+5=11k
      すなわち、
      (x',y')=(-13k+6,11k-5)
      無論、k=0のときが、上の、
      x'が13より小さい正数であり、かつ、y'が絶対値において11より小さい正数である特殊解、
      (x',y')=(6,-5)
      である。
      では、
      x'が絶対値において13より小さい正数であり、かつ、y'が11より小さい正数である特殊解、
      の方はどうか?
      k=1とすればよい。すなわち、
      (x',y')=(-7,6)
      (ア)に戻ると、解は次のように書ける。
      (x,y)=(23(-13k+6),23(11k-5))
      もう少しシンプルな表現にしたい。k'=23kとおくと、
      (x,y)=(-13k'+23×6,11k'-23×5)
      23×6=13×10+8,23×5=11×10+5であるから、
      さらに、たとえば、k''=k'-10とおくと、
      (x,y)=(-13(k''+10)+13×10+8,11(k''+10)-11×10-5)=(-13k''+8,11k''-5)
      23×6=13×11-5,23×5=11×11-6であるから、
      または、たとえば、k'''=k'-11とおくと、
      (x,y)=(-3(k'''+11)+13×11-5,11(k'''+11)-11×11+6)=(-13k'''-5,11k'''+6)
      ここでも、端数の絶対値を23より小さくする方法が、ただ2通り、存在するのである。
    • (2)39x-29y=326・・・(ア)
      (39,29)=1であるから、39x'-29y'=1は整数解をもつ。
      得られた(x',y')に対して、(x,y)=(326x',326y')である。
      39x'-29y'=1を解く。・・・(イ)
      x',y'の係数の絶対値39,29を「ユークリッド互助法」により、次第に小さくし、最終的にはどちらかを1に帰着させる。
      (39,29)=1、すなわち、39と29は互いに素であるから、かならずこれは可能である。
      (29×1+10)x'-29y'=1
      29(x'-y')+10x'=1
      (10×2+9)(x'-y')+10x'=1
      10{2(x'-y')+x'}+9(x'-y')=1
      10(3x'-2y')+9(x'-y')=1
      (9×1+1)(3x'-2y')+9(x'-y')=1
      9{(3x'-2y')+(x'-y')}+(3x'-2y')=1
      9(4x'-3y')+(3x'-2y')=1
      こうして、第2項の係数が1となった。
      明らかに、4x'-3y'=0,3x'-2y=1は、解である。
      この連立方程式を解くと、


      (x',y')=(3,4)
      これは(イ)の無数に存在する整数解のうちのひとつの解(特殊解)である。
      ちなみにこれは、x'が29より小さい正数であり、かつ、-y'が絶対値において39より小さい正数である特殊解である。
      (イ)に代入して、辺々引くと、
      39x'-29y'=1・・・(イ)
      39・3-29・4=1・・・(ウ)
      39(x'-3)-29(y'-4)=0・・・(イ)-(ウ)
      すなわち、
      39(x'-3)=29(y'-4)
      ここに、(39,29)=1であるから、
      x'-3=29k
      y'-4=39k
      すなわち、
      (x',y')=(29k+3,39k+4)
      無論、k=0のときが、上の、
      x'が29より小さい正数であり、かつ、-y'が絶対値において39より小さい正数である特殊解、
      (x',y')=(3,4)
      である。
      では、
      x'が絶対値において29より小さい正数であり、かつ、-y'が39より小さい正数である特殊解、
      の方はどうか?
      k=-1とすればよい。すなわち、
      (x',y')=(-26,-35)
      (ア)に戻ると、解は次のように書ける。
      (x,y)=(326(29k+3),326(39k+4))
      もう少しシンプルな表現にしたい。k'=326kとおくと、
      (x,y)=(29k'+326×3,39k'+326×4)
      326×3=29×33+21,326×4=39×33+17であるから、
      さらに、たとえば、k''=k'+33とおくと、
      (x,y)=(29(k''-33)+29×33+21,39(k''-33)+39×33+17)=(29k''+21,39k''+17)
      326×3=29×34-8,326×4=39×34-22であるから、
      または、たとえば、k'''=k'+34とおくと、
      (x,y)=(29(k''-34)+29×34-8,39(k''-34)+39×34-22)=(29k''-8,39k''-22)
      ここでも、端数の絶対値を326より小さくする方法が、ただ2通り、存在するのである。