「同型写像・準同型写像」を定義する。 ここでの疑問は、 定義を確認しておこう。 一つ目の疑問は、氷解する。Gの元を同じGの元に対応付ける写像において、一般に終域はGの部分集合G'となる。これがたまたまGそのものとなる、すなわち、G'CG=φなのだから、終域の中に、その原像をもたない元はない、これすなわち「上への写像」。
「上への1対1対応(全単射)」のときのみ、逆写像が存在するからだ。
二つ目の疑問は、「準同型写像」の定義は、「同型写像」の定義から逆写像の条件をはずしただけだ、と読める以上、「全射」であるが「単射」でない、を前提としているようであるが、ならば、「同型写像」のときのように、「自己準同型」みたいな概念はありえないのかしら?、と思い悩んだのである。
始域Gと終域G'が同じ集合で、なおかつ「全射」であるが「単射」でない、ものの例として、ものの本には次のようなものが挙げられている。
自然数全体の集合Nから、Nへの写像fは、
nNに対して、f(n)は、nの異なる素因数の個数、
なるほど、いかなる自然数に対しても、それだけの個数の異なる素因数を持つ自然数を見つけることができるから、これは「全射」であるが、
たとえば、f(8)=f(9)=1だから、「単射」ではない。
このようなことが生じるのは、この例のようにNが「無限集合」であるからなのではないか、という予感がする。

有限集合GからGへの写像φにおいて、φが「全射」ならば、「単射」であることを示せ。
G={x1,x1,・・・xn}に対して、あるi,jij に対してφ(xi)=φ(xj)=xlだったとする。この事実によって、n個の始域の要素の像が、高々(多くても)、n-1個であることがわかる。

そうすると、終域G側に、少なくとも1個の「もれ」が生じる。たとえば、xmが、どこから来たか?、がわからなくなる。これはまさに、φが全射でないことを意味している。
単射でないことを仮定して、全射でないことが示された、これすなわち「対偶」によって、上の命題が示されたことになる。
少し怪しいが、一応解決したことにして次に進む。

「準同型写像」のイメージをつかむために、以前も用いた、次のような正方形を、回転または裏返しによって、同じ正方形に重ね合わせるすべての操作の集合Dを考える。
a1=a1=e恒等置換
a2=a2=a3時計回りπ/4回転
a3=a3=a2反時計回りπ/2回転
a4=a4=a反時計回りπ/4回転
a5=a5=b左右反転
a6=a6=ba3=ab左右反転後、時計回りπ/4回転
a7=a7=ba2=a2b左右反転後、反時計回りπ/2回転
a8=a8=ba=a3b左右反転後、反時計回りπ/4回転

eを恒等置換、aを「反時計回りπ/4回転」、bを「左右反転」として、この二つのみの組み合わせで、表現する。
a4=e  ,  b2=e  ,  bab-1=a-1を用いると、
連続した2つの操作の結果を表す表は、次のようになる。この操作には交換法則が成立しない。横軸に並んでいるのが「1回目」の操作、掛け算の如き数式では左側に並ぶものを表し、縦軸に並んでいるのが「2回目」の操作、同じく右側の文字を表わす。
  
これを右のように塗り分けて、を全体としてa1'、を全体としてa2'、と呼び、集合G'={a1',a2'}とし、
集合G={e,a,a2,a3,b,ab,a2b,a3b}からG'への写像φを、 と定義すれば、 こうして、集合G'はGに準同型であり、φGからG'への、準同型写像である、といえる。

「正規部分群」の定義に入る。
準同型GG'において、G'の単位元e'に対応するGの要素全体をHとする。
Hの性質について調べる。
まず、HGの部分群である。
群の定義は、
  1. 集合G={a1,a1,・・・,an,・・・}は有限もしくは無限の集合で、
    その上に2変数の関数φ(a,b)=cが定義され、その値は常にGに属する。
    このφ(a,b)=cab=cで表わす。
  2. 任意の3要素a,b,cに対して結合法則が成立する。
    (ab)c=a(bc)
  3. Gae=ea=aなる要素eを含む。このようなe単位元という。
  4. Gの任意の要素aに対して、aa-1=eなるようなa-1Gに含まれる。
    a-1a逆元という。
以上4つの条件を満たす集合Gを群という。
  1. h1H,h2Hに対して、φ(h1)=e',φ(h2)=e'
    「準同型写像」の定義から、φ(h1h2)=φ(h1)φ(h2)=e'e'=e'
    よって、h1h2H
  2. ここで、Gは「操作」の集合である。「操作」については結合法則が成り立つ。
  3. これに関して遠山前掲書は、hHに対して、φ(h-1)=φ(h)-1=e'-1=e'
    というのだが、「準同型」の定義には逆元について触れるところがないから、どうしてこれが出てくるのか、わからない。
  4. 上が示されたとしたら、φ(e)=φ(hh-1)=φ(h)φ(h-1)=φ(h)φ(h)-1=e'e'-1=e'
    が導かれるのだが、・・・。
頭が悪いのだから仕方がない(笑)、HGの部分群であることが示されたとして次に進む。
HGの部分群であるのみならず、著しい特徴を示す。
Gの任意の要素xに対して、Hの左剰余類Hxと、右剰余類xHが一致する。すなわち、
xGに対してHx=xHすなわち、
xGに対してx-1Hx=H
このようなHを「正規部分群」と称す。
残念ながらこの部分の証明も、ついていけない部分があるので(笑)割愛し、具体例で確認して満足することにする。

前掲の、正方形を、回転または裏返しによって、同じ正方形に重ね合わせるすべての操作の集合Dについて、「正規部分群」を選び出したい。
すべての部分群が正規部分群になるわけではないから、まずは、部分群を逐一抽出し、その一つ一つについて、上の定義に照らして、正規部分群の要件を満たしているか否かを判定することになる。
すべての部分群を列挙するだけでも、へとへとになるような(笑)力仕事である。
有限群の要素の個数を「位数」といい、部分群の「位数」は、元の群の「位数」の約数でなければならない、という定理がある。これも証明なしで採用することにすると、
Dの位数は8、したがって、部分群の位数は、1,2,4,8のいずれかである。 以下、この一つ一つについてその「正規性」を論じる運びだが、いささか、疲れた(笑)。

「左剰余類、右剰余類」について。
部分群gの各要素を左に置いて、これに対して右から要素c、または要素dを「掛ける」。
gG , g={a1,a2,・・・,am} , cG , dG
gc={a1c,a2c,・・・,amc} , gd={a1d,a2d,・・・,amd}
これら、gcgdが共通の元xをもつとすると、
xgc , xgd
x=aicかつ、x=ajd
すなわち、aic=ajd
したがって、c=ai-1ajd
gcの任意の要素、akcは、
akc=akai-1ajd
ここに、ak , ai-1 , ajは、いずれも部分群gの要素であるから、右辺はgdの要素である。
xgcに対して、xgdが言えたのだから、gcgd
同様に、aic=ajdから、d=aj-1aic
gdの任意の要素、akdは、
akd=akaj-1aic
右辺はgcの要素である。
xgdに対して、xgcが言えたのだから、gdgc
以上から、gd=gc
つまり、gc , gdは、もし共通部分をもつなら、かならず同じ集合になる。
その「対偶」、異なる集合を取ることができれば、それらは共通部分をもたない。gcgd
このような、gc,gd,・・・でGのすべてをとり尽すことができるとき、すなわち、gcgd∪・・・=Gとなるとき、
gc,gd,・・・を、gの左剰余類と呼ぶ。
類に含まれるそれぞれの、gc,gd,・・・の要素の個数はみな等しく、gの要素の個数mである。
gc,gd,・・・がl個だとすれば、Gの要素の個数nは、n=lmとかけることになる。
これが、上で用いた、部分群の要素の個数(位数)は、もとの群の要素の個数(位数)の約数であるとの定理の証明になっている。
同様に、cg,dg,・・・でGのすべてをとり尽すことができるとき、すなわち、cgdg∪・・・=Gとなるとき、
cg,dg,・・・を、gの右剰余類と呼ぶ。

さて、左剰余類と右剰余類が一致するような部分群を、正規部分群と呼んだのであった。
では、始めよう。Dのすべての部分群は、以下のようであった。
g0={e}
g1={e,a2},g2={e,b},g3={e,ab},g4={e,a2b},g5={e,a3b}
g6={e,a3,a2,a},g7={e,a2,b,a2b},g8={e,a2,ab,a3b}
D={e,a3,a2,a,b,ab,a2b,a3b} 疲れた(笑)。正規部分群でな・い・ものが出てきてくれないと、面白くないのだが、今日のところは、この辺で・・・。

つづき。