このような意味を産出させるような分析経験は、どのように時間的に構造化されているのだろうか。ラカンは、「三人の囚人」の寓話にあてはめてそれを説明している。その寓話は次のようなものである。
三人の囚人がいた。そこに所長がやって来て、こう言った。「ここに五枚の円板がある。三枚は白で二枚は黒だ。これをおまえたちの背中に貼りつける。他人の背中を見ることは許されるが、話をしてはならない。そして、自分の背中の円板の色が分かった者だけが、そしてその理由を論理的に正しく構成できた者だけが、解放される」。そして所長は、三人の囚人のすべての背中に、白い円板を貼った。
結果は、三人が同時に所長のところに来て、同じ論理を述べたので、三人とも解放された。・・・
「ラカンの精神分析」新宮一成(講談社現代新書)