• 「ベクトルの外積」の定義

    ただし、nは、
    • aベクトルとbベクトルの始点をそろえ、
    • aをbに重なるように回転したとき、
    • その回転方向を右ねじの回転方向に見立てたならば、右ねじが進行する方向の単位ベクトル、
    である。

  • 回転する座標系上の運動方程式
    同一の点Oを原点とする2つの座標系S,S'があり、S'系はOを通る定軸の回りを角速度ωで、S系に対して相対的に回転している。
    ここに「角速度ベクトル」ωは、
    • その大きさがω、
    • その回転方向を右ねじの回転方向に見立てたときに、右ねじの進行方向をその方向とする
    と、定める。
    S'系に対して相対的に静止している
    ベクトルBの時間的変化率dB/dt
    一般のベクトルAの時間的変化率dA/dt
  • S'系に対して相対的に静止しているベクトルBの時間的変化率dB/dt
    B(t+t)-B(t)=
    は半径Bsinθ、中心角ωtの扇形の「弦」であるが、tが十分小さいときは、「弧」に近似して差し支えない。
    したがって、
    ||=ωBsinθt
    また、の方向は、角速度ベクトルωをBに重なるように回転したときに、右ねじの進む方向、であるから、「外積」の定義に従って、
    =ω×Bt
    すなわち、

  • 一般のベクトルAの時間的変化率dA/dt
    S系においては、
    • 時刻tにおいてA(t)=
    • 時刻t+tにおいてA(t+t)=
      すなわち、
      A(t+t)-A(t)=
    S'系において、時刻tにおいてP点にいた観測者からこれを眺めると、
    • A'(t)=
    • tの間にPはQ間で移動するから、
      +=
      すなわち、
      (ω×A)t+A'(t+t)=A(t+t)-A(t)
      S系における変化量をA、S'系における変化量を'Aと書くと、
      (ω×A)t+'A=A
      よって、
          ・・・(1)
  • (1)式にωを代入すると、外積の定義からω×ω=であるから、
    S系における時間変化率も、S'系における時間変化率も等しくなるので、下のような記号で定義する。
          ・・・(2)
  • ベクトルAの時間による二階微分d2A/dt2
    • (1)の両辺をtで微分する。積の導関数(uv)'=u'v+uv'を用いて、
          
    • 右辺第一項、第三項に(1)を適用して、
          
    • (2)を用いてまとめると、
          ・・・(3)
  • S系における運動方程式
      外力をFとすれば、
          ・・・(4)
  • S'系における運動方程式
      (3)(4)より、
          
      したがって、S'系における運動方程式の右辺には4つの項が現れることになる。
          ・・・(5)


  • 自転する地球上での運動について考える。運動する質点の位置ベクトルをrとすると、
    • 一様な回転(ωは一定)であるから、    ・・・(6)
    • 重力mgと外力Fを受けているとして、S系での運動方程式を書くと、
          
      (5)の関係を用い、かつ(6)であるから、
          
    • したがって、S'系での運動方程式は、
          
      まとめると、
          ・・・(7)
      右辺第2項は、「見かけの重力」であり、第3項が「コリオリの力」である。

  • 「見かけの重力」について。
    北緯θの地表面に静止している質量m質点には、地球の自転による「向心加速度」が生ずる。 地球の地軸に固定された観測者から見ると、この質点に作用する重力mgと、垂直抗力Nの合力が地軸に向かって垂直になっていなければならない。 地表面の観測者からみると、重力、遠心力、垂直抗力の3力がつりあっていなければならない。
    いずれにしても、垂直抗力は、地球の中心より、やや下方に向かうことになる。
    北緯θの地表面に静止している質量mの質点に作用する、重力mg、遠心力Rω2cosθ、これらと釣り合う垂直抗力N。
    その根元は、地球中心より南極側にずれる。
    南緯θの地表面に静止している質量mの質点に作用する、重力mg、遠心力Rω2cosθ、これらと釣り合う垂直抗力N。
    その根元は、地球中心より北極側にずれる。

  • 「コリオリの力」
        
    ベクトルの外積の定義に従えば、この力の方向は、
    • 角速度ベクトルωを、地上の質点の移動速度ベクトルd'r/dtに重なるように回転したとき、右ねじの進む方向、
    • の、反対方向、
    ということになる。




    北緯θの地表面で、真北に向かって移動する質点には、東向きに、すなわち、進行方向に対して右に傾くように、「コリオリ力」が作用する。 南緯θの地表面で、真南に向かって移動する質点にも、やはり東向きに、すなわち、進行方向に対して左に傾くように、「コリオリ力」が作用する。