(3)[エネルギー・熱の移動](2007本4c)一部
お茶の「全量」の熱容量を、
C
1
、湯飲み一個の熱容量を、
C
2
、としよう。
また、はじめのお茶の温度を
T
H
、湯飲みの温度すなわち「室温」を、
T
L
、としよう。
第1段階
【方法A】お茶の「全量」が失った熱量が、「一つ目」の湯飲みが受け取った熱量
Q
A
に等しい。
第1段階の平衡温度を
T
A1
とすると、
Q
A
=
C
2
(
T
A1
-
T
L
)
C
1
(
T
H
-
T
A1
)=
C
2
(
T
A1
-
T
L
)
これは、
T
H
T
L
を、
C
2
:
C
1
に、
内分
したものに他ならない。
【方法B】お茶の半分の量が失った熱量が、一方の(たとえば、後に「空になった」方の)湯飲みが受け取った熱量
Q
B
に等しい。
第1段階の平衡温度を
T
B1
とすると、
Q
B
=
C
2
(
T
B1
-
T
L
)
C
1
(
T
H
-
T
B1
)=
C
2
(
T
B1
-
T
L
)
すなわち、
C
1
(
T
H
-
T
B1
)=2
C
2
(
T
B1
-
T
L
)
これは、
T
H
T
L
を、2
C
2
:
C
1
に、
内分
したものに他ならない。
Q
A
と
Q
B
の大小関係が知りたい。そのためには、
T
A1
と
T
B1
の大小関係がわかればよい。
と、計算してみるまでもなく、明らかに、
T
A1
>
T
B1
である。
したがって、
Q
A
>
Q
B
、答えは、(1)(2)(3)のいずれかに絞られる。
第2段階
【方法A】温度
T
A1
の
高温物体
であるお茶の「全量」が、温度
T
L
の
低温物体
である「二つ目の湯飲み」に接触する。
第2段階の、すなわち最終的な、平衡温度を
T
A
とすると、
C
1
(
T
A1
-
T
A
)=
C
2
(
T
A
-
T
L
)
これは、
T
A1
T
L
を、
C
2
:
C
1
に、
内分
したものに他ならない。
【方法B】温度
T
B1
であるお茶の半量が、やはり温度
T
B1
であるもうひとつの「まとめ」られた方の「湯飲み」に接触する。
ここには
温度差
が、ない!、したがって、
熱の移動は生じない
!
だから、第2段階の、すなわち最終的な、平衡温度
T
B
は、
T
B1
に等しい。
T
B
=
T
B1
では、【方法A】【方法B】のそれぞれの最終的な平衡温度
T
A
、
T
B
は、どちらが大きいのか?
「強引に」計算する方法も、なくはない。
グラフから、もう少し「直感的」(!)に理解する方法は?
T
=
T
H
-
T
L
T
A
=
T
A
-
T
L
T
B
=
T
B
-
T
L
とおくと、
T
A
は、
T
を
倍に
縮小
した後、再び、
倍に
縮小
したもの
すなわち、(
)
2
倍に
縮小
したものだ。
T
B
は、
T
を、ただ一度だけ、
倍に
縮小
したものだ。
どちらが大きいかを、「帰納的」(!)に調べてみると、おそらく、「湯飲み」という
固体に比べて、液体の水のほうが熱容量は大きい
、と考えてよいだろうから、
たとえば、
C
1
= 2 ,
C
2
= 1 ならば、
T
A
=(
)
2
T
=
T
0.44
T
T
B
=
T
=0.5
T
たとえば、
C
1
= 3 ,
C
2
= 2 ならば、
T
A
=(
)
2
T
=(9/25)
T
=0.36
T
T
B
=
T
0.43
T
そんな、ひとつ二つの例だけでは、もちろん、証明になっておらず、一般的に成り立つなどとはいえない。
でも、数字の選び方、この場合、それぞれの熱容量に影響を及ぼすお茶の量や、「湯飲み」の材質によって、コロコロ結果が変わるのだったとしたら、
こんな出題の仕方はされていない
はずだ(!)、という、
ずるい
見方、もありうる。
念のため、熱容量の大小関係が逆転、という「異常」な事態についても調べてみると、
たとえば、
C
1
= 1 ,
C
2
= 2 ならば、
T
A
=(
)
2
T
=
T
0.11
T
T
B
=
T
=0.2
T
と、
もちろん
、成立している。
不等式の証明としても、こちらのほうが、少し、楽。
というわけで、答えは、(3)であった。
ところで、【方法B】の第2段階で、熱の移動が生じず、温度が下がらない、というのはもちろん、「常識」に反する。
これは、「湯飲み以外への熱の流出は無視」という前提が、「非現実的」(!)だからだ。
お茶という液体の表面が空気に接触すれば、当然に空気への熱の移動が生じる。
液体を小さい部分に分けて、空気との接触面積を増やす、という【方法B】は、「常識」にかなった、とても合理的な「お茶の冷まし方」、なのである!
【例題】:「内分比」の使い方。
(3)(理科総合A・2009本試験第3問の一部)
熱量計(「断熱容器やかくはん棒、ひも、温度計の熱容量は無視できる」、とあるから、「水」、といっても同じだが)の熱容量を
C
[J/K]、
金属A、金属Bの比熱をそれぞれ
c
A
,
c
B
[J/K・g]、
二つの金属は「同じ質量」とあるから、これを
m
[g]としよう。
それぞれの金属が失った熱量と、熱量計が得た熱量が等しいから、
m
c
A
(100-29)=
C
(29-25)・・・(1)
m
c
B
(100-34)=
C
(34-25)・・・(2)
すなわち、
71
m
c
A
=4
C
・・・(1')
66
m
c
B
=9
C
・・・(2')
これは、
100と25を、
C
:
m
c
A
に「内分」した点が、29、
100と25を、
C
:
m
c
B
に「内分」した点が、34、
と読むことができる。
C
:
m
c
A
=(100-29):(29-25)
C
:
m
c
B
=(100-34):(34-25)
すなわち、
C
:
m
c
A
=71:4
C
:
m
c
B
=66:9
したがって、
71
m
c
A
=4
C
・・・(1')
66
m
c
B
=9
C
・・・(2')