被駐留国の権利章典
はじめに
「被駐留国の権利章典」は、すべての合衆国軍事基地に適用さるべき基本的な汚染除去の基準を定めるためのサミットにおいて、その参加者によって作成され、採択されたものである。そして、それは以下に掲げる機会などにおいて、報道機関、公的機関及び一般に公開された。
- バーバラ・リー下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)、ポール・ウェルストーン上院議員(民主党、ミネソタ州選出)の共催になる米国議会公聴会
- NGOサミット出席者及びその出身国大使館の代表の会議
- NGOサミット出席者ならびに「国連軍縮及び先住民委員会」の代表の会議
- ローテンバーグ(民主党、ニュージャージー州)、マッケイン(共和党、アリゾナ州)、ケネディ(民主党、マサチューセッツ州)、レヴィン(民主党、マイアミ州)各上院議員との個別の会談
- 合衆国軍事基地の汚染除去を管轄する米国務省の各地方事務所及び国防長官事務所における会談
米国議会における説明会で「被駐留国の権利章典」はペルー代表の、弁護士であり「アクシオン・アンディーナ(アンデス行動委員会)」の代表であるリカルド・ソベロン氏によって紹介された。彼の発言は以下の通りである。
ありがとうございます。ウェルストーン上院議員のおっしゃる通り、わがアンデス地域は今、基地の汚染除去を保証する手続が確立されないまま、米国軍隊の駐留が著しく増大しており、それゆえ、同地域における地域社会の健康が潜在的な危険にさらされています。この3日間、世界中の人々が集い、合衆国軍事施設の存在に起因する共通の問題について議論を重ねてきました。その結果、私たちは私たちの間で情報を交換するだけでなく、それを共有し、かつ、すべての合衆国外の米軍基地に適用さるべき共通の基準を確立することが重要だと考えるにいたりました。皆様のお手元のファイルには、「植民地宗主国及び、外国の軍隊を駐留させている地域、人民及び国家の環境への権利章典」が一部ずつ入っています。わたしはこの文書を皆様とごいっしょに見ていきたいと思います。この文書は基本的に2つの部分に分かれています。第一部は、私たちが、私たち自身の政府に対して主張できる問題に関するものです。私たちはほとんどの場合、合衆国の軍事基地が位置している私たちの領土の一部で何が起こっているかを知る権利を否定されているからです。しかし、さらに重要なのはこの文書の第二部です。それは基本的に、合衆国当局に適用さるべきものです。この文書が合衆国議会という、未来においても重要な決定が下されるであろう場所において公開されることはきわめて重要な意味を持っています。これらの問題に直面している私たちが合意に達したいくつかの決定について、御一緒に見ていきたいと思います。特に私たちが皆様に見ていただきたいのは、もし合衆国政府が、安全保障の名のもとに、将来において世界中の至るところにあらゆる種類の軍事基地を建設する権利を有すると考えるならば、その権利には、これらの軍事基地の存在により被害を被る住民を安心させ、完全な汚染除去を行い、さらに必要ならば、海外におけるかかる政策によってさまざまな種類の被害を被った住民に対して、被害の救済及び補償を行うべき義務を伴わなければならないという点です。最後に私が皆様と共有したいのは、この文書が最終的なものではなく、検討が継続さるべきものだということです。私たちにとって、とりわけ合衆国の団体にとって、これは第一歩に過ぎません。なぜなら、この文書は、この問題に関する専門家の長時間にわたる討論の成果として出来上がった一つ一つの原則、一つ一つの条項を、政策決定者に記憶にとどめていただくための道具に過ぎないからです。どうか、仔細にこの文書を検討してください。そしてここにおられる報道機関の皆様には、この問題が単に合衆国の安全保障に関わるものにとどまらず、合衆国の軍事基地の近傍に暮らす人々の環境の安全に関わるものであることをご理解いただきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
外国及び植民地宗主国の軍隊を駐留させる国における、個人、先住民、地域社会及び国家の権利章典(要約)
合衆国政府がその軍事基地の運営においてなすべき施策に関する統一的な規約は以下に掲げる条項を含まなければならない。
- 合衆国はその海外の軍事施設を認めている国及び植民地の地域住民の健康・福祉・環境を、合衆国の環境基準をその最低限の基準とする管理基準を適用して、保護しなければならない。
- 合衆国は各被駐留国の合衆国軍事施設における、環境保護・汚染防止・基準適合を達成させるための施策についてのみならず、施設の運営に伴って発生する事故・疾病その他の健康・福祉・環境または公衆衛生上の諸問題について詳述した月間報告を公開しなければならない。
- 被駐留国の環境及び公衆衛生担当部局は、環境保護の監視と基準違反の摘発のための通常検査として、各基地司令部への通達から24時間以内に基地内の立ち入り検査を独立して行う権利を有する。
- 合衆国は、その現有のまたはすでに閉鎖された自国外の基地について、合衆国における現行の環境回復計画の完全な遵守を最低基準として、汚染除去の施策を行わなければならない。
- 合衆国は、被駐留国の環境及び公衆衛生担当部局との緊密な連携のもとに、環境調査及び、回復計画を実施しなければならない。
- 国家安全保障を目的とする適用除外は、内陸・陸上・海上軍事施設を汚染する危険物質・化学兵器・生物兵器・不発弾または放射性物質の報告および除去に関しては、これを適用しない。
外国及び植民地宗主国の軍隊を駐留させる国における、個人、先住民、地域社会及び国家の権利章典
はじめに
1999年10月25日から29日にかけてトリニティ大学において開催された「軍事基地汚染除去に関する国際草の根サミット」には14の国および植民地から70名が参加し、この「外国軍隊被駐留国の個人および国家の環境権利章典」を確認し、採択するとともに、被駐留国の議会、国連およびその他の国際機関が同章典を採択し、国内法および国家間の規約をこれに適合するよう整備することを求めた。国連およびその他のさまざまな国際決議によって繰り返し確認されてきたように、人はすべて平和・安全・健康に、自己の所有する財産の享受、環境の保全、環境の持続可能性、環境的正義を保障され、かつ政治的見解の自由およびいかなる政府に帰属すべきかの選択権を有しながら、生きる権利を有することを我々もまた確認する。軍国主義によってこれらの権利は危殆に瀕している。
前文
いくつかの政府は、他国および植民地の領域内に数十年にわたって軍事基地を保有してきた。
現有および過去に使用した軍事基地は、健康・福祉・環境・将来の世代・将来の財産利用を脅かす環境汚染の源となっている。
また、他国および植民地に基地を維持してきたこれらの政府は、当該施設とその運用が、健康・福祉・環境に及ぼす有害な影響について、無視、過小評価または否定してきた。
環境的正義の原則は、経済的に不利益な地位にある地域社会・女性・子供・有色人種および先住民が、しばしばこれらの軍事施設に起因する環境破壊の重圧を不均等に被っていることを認めている。
軍事目的のための財産の剥奪は、個人の完全かつ正当な自己所有土地使用を妨げている。
1972年の「人間環境に関するストックホルム宣言」他に結実している国際法は、国家は自国の活動により他国の環境に破壊をもたらさないように保障する義務を有する。
「汚染者が責任を負う」との原則および予防の原則は、アジェンダ21およびその他の関連する国際条約の中に、国際的に認知されたものとして盛り込まれている。
健全な環境は基本的人権の一部をなす。
人はすべて、自己の土地・水資源その他の財産および資源の、道義的で適切な、責任ある利用の権利を有する。
人はすべてみずからに影響を及ぼすべき環境問題につき、告知され、意思決定過程に参与する権利を有する。
人はすべて、毒物・危険物質による生命・健康・福祉・環境の侵害に対して、その救済を求める権利を有する。
よって、以下のように決議する。
- 第1条 人はすべて外国および植民地宗主国の軍事基地および関連する諸活動に関する環境上の問題について、正確で時宜に適ったかつ理解可能な情報への権利を有する。
その情報は、無料で提供されるものとする。
- A.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、すべての個人および被駐留国が、健康・福祉・環境に危険を及ぼすおそれのあるものを特定することを容易にするような情報を公開しなければならない。
- B.国家および地方政府、非政府機関並びに影響を受ける地域の代表は、健康・福祉・環境に影響を及ぼすおそれのあるものを調査するため、外国および植民地宗主国の軍事基地への立ち入り検査を行う権利を有する。
- 第2条 すべての個人および被駐留国は外国および植民地宗主国の軍事基地及び関連する諸活動によって汚染された場所の環境浄化への権利を有する。
- A.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、すべての活動を、汚染防止の原則にしたがって行わなければならない。
- B.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、その活動が環境を害さないよう、定期的かつ包括的な分析・調査を行わなければならない。
汚染された場所が発見された場合、外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、環境調査と汚染除去計画を本権利章典の第3条に規定する方法で、迅速に実施すべく行動しなければならない。
- C.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、基地および関連諸活動により汚染された場所に対する系統的かつ徹底的な汚染除去を行わなければならない。汚染除去活動は第3条および第4条に合致したものでなければならない。
- D.汚染者が責任を負うとの原則に従い、前項の汚染除去にかかる費用は、汚染者が負担する。
- E.被駐留国が発展途上国である場合、汚染除去活動には、当該国、非政府機関および影響をこうむる地域に対する、当該被駐留国の環境浄化の技術的能力と市民的監視を強化するための、訓練、技術移転および技術支援を含むものとする。
- 第3条 外国および植民地宗主国の軍事基地による汚染によって引き起こされた傷害、危険の評価に当たっては、予防の原則が適用されなければならない。汚染除去の方法は有毒、危険物質の封じ込め、蓄積、分散、希釈ではなく、永久的な破壊、また「制度的規制」と呼ばれる将来にわたる使用に対する物理的なまたは法的制限を中心とするものでなければならない。
当該物質をその本来の軍事目的のために使用することは、適切な対策あるいは廃棄とはみなされない。有害危険物質の破壊に用いられる技術は、他の汚染問題を引き起こすものであってはならない。
汚染除去の基準は第4条に規定する達成可能な最適のものでなければならない。
- A.環境浄化活動が、環境・福祉・健康に対する潜在的な悪影響をもたらす場合は、被駐留国は、浄化の必要性と悪影響の危険とをどのように均衡させるかについての公衆の討議を求め、潜在的な悪影響を軽減する施策を開発し、浄化計画に影響を受ける公衆の利害が反映されるようにしなければならない。環境浄化活動にあたっては、それに関与する労働者への被爆その他の危険を最大限避けるように配慮されなければならない。
- 第4条 すべての個人および被駐留国は、環境浄化の事前評価・立案・実施・評価および監視のあらゆる段階における意思決定に有意義に参与する権利を有する。
- A.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、すべての環境浄化活動を透明なやり方で実行しなければならない。外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、環境浄化や汚染防止に関する情報を、関連文書のすべてを公衆が見ることのできる場所に置き、直接個人が無料で閲覧出来るようにすることによって、定期的に公開しなければならない。
政府は、公衆の最大限の参加を保障するため、これらの情報を事前に配布しなければならない。
- B.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、環境浄化の各段階の前に公衆の意見を求めるために、合理的な長さのかつ延長可能な期間を設けなければならない。
- C.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、環境浄化の事前評価・立案・実施・評価にかかる意思決定に、影響を受ける地域と非政府機関が参加出来るような機構を用意しなければならない。
ここには環境浄化に関する意思決定に還元、反映させるための助言委員会の設立を含むものとする。かかる委員会は影響を受ける地域の利害関係者や代表、非政府機関、商工業の利益代表者、地方政府代表などから構成される。
しかしながら、駐留国政府は助言委員会の成立をもって完全な公衆の協力が得られたと解してはならない。
- D.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、事前評価・立案・実施・評価において、被駐留国の環境および公衆衛生の担当部局ならびに影響を受ける地域と、緊密な連携をとらなければならない。
- E.外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府は、被駐留国と影響を受ける地域が、第3条に規定する浄化工程を効果的に監視できるように必要な資金および技術を提供しなければならない。
- 第5条 すべての人と被駐留国は、生命・健康・福祉への侵害、財産上の損害および財産の権原なき使用並びに環境の破壊に対して損害賠償を求める権利を有する。
- A.すべての人と被駐留国は、国際的な紛争解決のための決議を求め、国際法に基づく救済を求めることができる。
- B.人はすべて、自己の所属する政府を含むあらゆる政府の立場に関わらず、その個人としての資格において、この章に規定する救済を求める権利を有する。
- C.国連およびその他の国際機関は、被駐留国、非政府機関および各個人のために、外国および植民地宗主国の軍事基地及び関連諸活動による環境破壊に関して、監視・調査・情報提供および支援を行わなければならない。
- D.政府間での合意が得られず、国連委員会あるいは他の国際機関が争いの調停を行うことができないときは、外国および植民地に軍事基地を保有する国の政府と被駐留国は争いの解決のために国際司法裁判所へその裁判権を委譲するものとする。
- E.この環境権利章典の原理は、国際法、条約、その他形成されつつある国際的法令に反映されなければならない。
- F.これらの権利は、軍事基地に関する条約、相互安全保障条約、立ち入り及び相互役務提供の合意、駐留軍に関する合意、地位協定、その他の被駐留国ならびに外国および植民地に軍事基地を保有しまたは他国の領土で軍事行動を行う国の政府間の、二国間あるいは多国間の軍事協定の中に反映されなければならない。
- 第6条 本環境権利章典は、かつて使用されていた、現に使用中の、または今後の使用が予想されるすべての外国および植民地宗主国の軍事基地に対して、そのような望ましからぬ、かつ破壊的な制度が終焉するまで、適用される。
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