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TOMO
in the
Bathroom
・4月21日
トモは長毛種の猫なんだが、そのふさふさの毛が、いつもよだれを垂らしているせいでこてこてに固まってしまっている。なるべく天気のいい日には屋上で日光浴をして、タオルをしぼって体を拭いて、毛をほぐしている。全身に白い粉みたいなのが散らばっているのはフけなんだろうと思っていた。
先日病院で、顕微鏡で見てもらって、どうもシラミの卵らしいことがわかった。
シラミは、今日では人間の場合でもペット業界でもほぼ絶滅したはずのものであったらしい。近年ふたたび蔓延する兆しがあるとの話も聞いたが、少なくともここの先生達も見るのは初めてだったらしく、ちょっと話題になってしまった。
いつもボロボロの動物ばかり持ち込んで迷惑をかけているから、肩身が狭いけど、ほんとにいつも親身に診察していただいて、感謝している。
「シラミまでわいてしまうなんて、よっぽど弱ってるのねぇ。」
シラミの生命力は、ノミやダニの比ではない。例えばノミには「フロントライン」とか「アドバンテージ」といった商標のすごい薬があって、簡単に滴下するだけで、動物本体にはほとんどダメージを与えず、ノミだけをほぼ完全に駆除することが出来る。
でもシラミの場合は、そう言えば戦争直後の時代には、占領軍に頭からDDTをふりかけられたものだ、みたいな話をいやと言うほど親から聞かされたものだけど、やはりかなり強力な、したがって動物自体にもダメージの大きな薬品を使わなければならないようだ。
「そんなことしたらこの子の方が死んじゃうよ」と言うのが先生の判断。ともかく他の猫との隔離をきっちりして、あとは、とりあえず、毛を刈ろうと言うことになった。
というわけで、今日はトモの散髪。
かくも強力な生命力を持つシラミなのだから、やはり私が自分の髪の毛を切るのに使っている鋏は使いたくなかったね。100円ショップと言うのは一体どうなっているんだろう。普通なら1500円くらいするはずのヘアカット用の鋏が100円でちゃんと売られている。
同じく100円のクシですきながら、シッポの方から少しずつ刈り上げていく。今まであまりちゃんと見てなかったから気がつかなかったけど、チョコレート色みたいなブラウンと、真っ黒が混じり合った、そんな微妙な色合いをしていたんだね。
背中とおなか、シッポと後ろ足は刈り終わった。上半身の方はさすがに少し抵抗する。あまり深追いはせず、今回はこのあたりにして獣医の先生の判断に待つことにした。
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龍宮城だより