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シロクロの子育て
子猫がおっぱいだけでなく固形物を食べられるようになると、今度は母親がそれを運んできてやらなければならない。口にくわえて運びやすそうなものを探すのは結構苦労した。
愛想があるんだかないんだかよくわからない不思議に切ない視線で、こうやってじーっと見つめられると、しょうがない、こんな小さな身体でがんばっているこの子の子育てをせいぜい応援してあげようなどと情も移って、スーパーに行っても、猫の口ぐらいの大きさで栄養の高いもの、とかなんとか、思わず探してしまっている始末。
あらびきウインナー、鳥のから揚げ、チキンナゲット、子持ちシシャモの揚げ物、などなど。閉店間際のスーパーでから揚げなんかが半額セールになってたりすると、家族に土産を持って帰るパパみたいに意気揚々としたもんだ。
本当はこんな人間の食べるものは味付けが濃すぎて犬猫の肝臓にはよくない。だから時には、鳥のむね肉のかたまりを買ってきて、まさしく「一口大」に切り分けて、昆布とじゃこのだしだけの味付けで煮込む。これはかなりの人気だった。口いっぱいにほおばって、そそくさと帰って行くのを見送りながら、じーんと胸に迫るものがあったね。
猫の社会にもいろいろ事情があるらしくて、子猫のいる場所は他のオス達には決して気づかれないようにしないと行けないらしい。だからえさを口にくわえて帰ろうとしても、それが他の猫に見つかってしまうと、いっそ一思いに、みたいに自分で食べてしまう。無事に子猫に届けられる成功率は6割7割くらいだろうか?だからそのリスクも含めて、こちらの経費もかさむ。
何匹生まれたんだろうか、何匹生き延びているんだろうか?きょうもこうして「シロクロ」は、およそ4回ばかり階段を上り下りして、「琉球黒豚・熟成ポークウインナー」を運ぶ。
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龍宮城だより