サミット関連の大騒ぎの中で知り合いになった方からの紹介で、ある左翼系の出版社から原稿依頼を受けました。「運動」におけるインターネットの利用みたいなものの一例ということで、お声がかかったのですが、「ケルン・サミットからシアトル・WTOへ!サイバー・スペースを駈け抜ける闘いの・・・」といった文章は、どこかよその星の言葉で書かれているみたいでした。やっぱりやめとけばよかった。締め切りが近づくにつれだんだん気が重くなってきて、ともかくぎりぎりに何とかでっち上げてこんな原稿をメールで送ってみたんですが、編集の方たち同士のメールの文面からは、ちょっと処置に困っておられる様子が伝わってきて、やっぱりやめとけばよかった。「あんたたちのゆってることなんか、な〜んもわからんよ」などというおせっかいな進言をするためにわざわざ原稿を引き受けたみたいなところがなかったわけではないのですが、そんな悪趣味はすべきではなかった。すみませんね。ボツにしてくれていいんだけどそれはそれで困るんだろうね。迷惑かけてしまった。

宮川です。ご無沙汰しています。**さんにはメールの返事も出さずに失礼いたしました。
あんな原稿を送りつけてしまってから、あまりにも「場違い」だったことに気づき、小心者ですから恐くてメールも見れなかったんです。
**さんが「辞退」するとなった今、私の原稿はますます意味のないものになってしまいましたね。沖縄からの「報告」めいたものが**さんのと私のと2通あって、私の方は「刺し身のつま」みたいなもので「こんなひねくれた人もいるんですね」風に読んでいただければそれなりに形になるかなと、勝手な「構想」の上に書かれたものですから。
というわけで私も辞退させていただくことにします。当初の締め切りを大幅に過ぎた今になってこんな事を言い出すのは、失礼の上に失礼を重ねることになります。本を出版するというのは、「運動」云々以前に「ビジネス」なんですから、こんないいかげんなことをするのは本意ではありませんが、やはり趣旨に合ったものは書けませんので、お許しください。
**さんをはじめ、皆様には多大なご迷惑をおかけすることになります。申し訳ありません。

「趣旨に合ったものは書け」ないことは最初からわかっていました。それなのに引き受けたのは、「あんたたちの言ってることはなーんもわからんよ」などというおせっかいなイヤミを差し挟んでみたいというイタズラ心でした。大人げのないことで、後悔しています。

無関係なエピソードをよかったら聞いてください。先日、ヘリ基地反対協主催の名護市役所前の集会に行ってきました。「普天間飛行場代替施設協議会」の第6回の開催に先立って企画されたものなのだけど、インフォメーションも不充分で集まりも天候も悪く、寒々としたものになりました。「私たちは数は少ないが、3年前の市民投票に示された『民意』という正義がある」とか、お決まりの空語が曇天に吸い込まれていきます。
「相次ぐ米軍の事件・事故に県民の怒りは頂点に達し」というが、こんなに人が集まらず、またこの人たちが大好きな「選挙」でも負けまくっているのに、自分たちのやっていることが何かが決定的に間違っているとは考えないんですかね。昔からそうなんですけど、近くは95年以来、人が強姦されるたびに「盛り上がり」をつくってきた「運動」は、今や米軍の潜水艦が日本の漁船に激突しても、沖縄の兵士が痴漢や放火をしても、もう「燃えない」ようになってきました。
集会後、博物館前までの「道ジュネー(デモのことを当地ではこう呼びます)」は、名護十字路の角、去年までは「サミット歓迎」系の事務所のあった場所に新たにオープンした「****」っていう、名護ではちょっと羽振りのいい居酒屋チェーン店の前で若い従業員たちが中指を突き立てて「歓迎」してくれました。北部の自然破壊の象徴として名高いその店の名前からして、彼らが「推進派」の土建屋さんと関係があるのかどうかは分かりません。
私たちは何をしているのでしょうか?この島を「ゆっくりと絞殺」しているのは「米軍」、「日本政府」、「日本国民」、「本土資本」、沖縄の「土建屋」・・・いつまでもそう言っていればいいよ。どさくさに紛れて首を閉めるのを手伝っているのは「運動」そのものなんだと、私は思っています。

名護のヘリ基地建設が断念されることを、私は心の底から望んでいますし、そのためにできることをしようと思っています。でもそれは「反対運動が勝利する」ということとは少し違うとも思います。次なる憎悪を生み出すに違いない「勝利」でも「敗北」でもない、「解決」というオプションはないんでしょうかね。

お送りした原稿はとてもまじめに正直に書きましたし、結構よくできてるんじゃない!っと自分では思っています。「沖縄の運動の現況を報告」というのならほかに適任はいくらでもいたでしょう。0.6%の国土に75%の米軍基地のみならず、75%の「左翼」が集中しているこの島にはむしろ「語り手」が多すぎるのです。ウェッブ・サイトを作るなどという地味な作業はしかしこれらの「語り手」にはむいていないようで、「インターネット活用」という点では無残な状況というしかありません。
**さんにお送りいただいた章立てをことさらに無視したわけではありませんが、実際のところあれでは何も書くことがないのです。
せっかくの原稿依頼でしたのに、こんな不手際になって申し訳ありません。