「シロ」ちゃんを紹介しましょう。
「ジュゴン保護基金」っていうところでボランティアみたいなことしてたんですけど、その事務所のある名護市東海岸・汀間(ていま)の野良犬でした。初めて会ったのはおととしの5月くらい。皮膚はぼろぼろ、見るからにくたくたの捨て犬だったけど妙にひとなつこくて、そのつぶらな瞳で見つめられると、目が離せなくなる、こうして週に一度ドッグフードの缶詰とビーフジャーキーを持ってお見舞いに来る日々が始まりました。
説教くさいはなしになりますが、「ヤンバル」は、「処分」に困った犬猫の「姥捨て山」になっているみたいですね。「世界遺産」にも値する豊かな森だから、生き延びる可能性はきわめて高いんだろうけれど、おかけで森の固有種の生態系が脅かされていることが問題にもなっています。
捨てられる犬猫たちにとっても、「ヤンバルクイナ」たちにとっても、悲しい話ですが、今までペットを飼ったこともなかった私が、こうして地元の子供たちにも愛され、近くの居酒屋さんから残飯をもらったりして結構幸せそうでもあったシロちゃんを連れて帰る気になったのは、別に正義感とは関係なくて、成り行きです。車にひかれたらどうしよう?保健所に連れて行かれたらどうしよう?などと心配するほうがもっとストレスになりそうだったから。
12月初め、無事「捕獲・連行」することができました。そうと決めていた訳ではなかったが、思い切って抱きかかえて車に乗せてみると案外落ち着いていて、首輪から犬小屋まで、何にも準備していなかったこっちの方があわててしまった。長旅のせいで少しナーバスでしたが、翌日にはごはんも食べてくれたし、散歩中にうんちもしてくれた。
その取れたてのうんちを持って、浦添の「蘭動物病院」で検査。いろんな病気に感染していて、「もう長くありませんよ」とか「一緒に暮らすのは難しいですね」とか言われるのを半ば覚悟していたんですが、幸い、かなり健康なよう。よくも2年間あまり、厳しい野良生活を生き延びたものだ。
フェラリアには罹っていました。沖縄には蚊が多いし、野犬のほとんどは罹患しているそうです。
野良犬を保護された方のためにも、しなければならない手続をメモしておきましょう。
保護した犬の場合、狂犬病予防注射は発病しないことの確認のために1週間程度の待機期間が必要。それ以外に、義務づけられている訳ではないが「8種混合ワクチン」の接種を初回のみ約一月おいて2回ないし3回に分けて行う。狂犬病予防注射の証明書を動物病院で発行してもらい、これを市町村の「環境保全課」等の担当部局に提出、鑑札をもらって登録手続は終わる。
こうしてシロちゃんは、「那覇市01846号」なる合法的存在となりました。
シロちゃんの心臓にはフェラリア原虫が何匹も住み着いていて、薬で殺すことは出来るのだが一度に殺してしまうと血管が詰まってしまうおそれがある。血管に流れ出た卵や子虫を月一度の投薬でこまめに退治しながら、親が一匹一匹死ぬのをゆっくり待つしかない。原虫の寿命は3年から4年。それまでシロちゃんも、そして私も生きていれればいいですね。
最後に、こんなにくたびれていた捨て犬のシロちゃんをていねいに診て下さった蘭動物病院の皆様に感動。2年間にわたってシロちゃんの面倒を見て下さっていた汀間の皆様に感謝!


龍宮城だより