Permanent
Vacation

いったん待合室に戻って、再びテレビを見る。もう一度呼び出されて、今度は血圧、脈拍、身長、体重の測定。時計を見ながら脈拍を数える間、看護婦さんは先ほどカルテに書きこまれた私のデータをながめている。そうか、こいつ40台半ばにもなるのにコロコロ仕事変えてようやく沖縄に落ち着いた思たらとうとう精神病院の世話になることになった言うわけやな!とか思ってるんだろうなぁ、ちょっとマゾヒスティックな快感かも。

いよいよ先生の診察室に呼ばれる。最初にどんな質問をされたかは覚えていない。でもきっとぺらぺらしゃべったんだと思う。うつ病の患者さんにはほとんどまともに話ができない人も多いんですが、あなたは今いきなりすらすらとしゃべり出しましたね、と指摘された。確かに。でもかなり無理しているんですよ。心臓がドキドキしている。人前で普通に振舞うことは多分ちゃんとできていると思う。だけどそのちゃんとできていること自体が、後から一人になったとき大きな負担になる。揺り戻しがくる。だから人と会うのが大変なのだ。

どん底の「鬱」状態と「絶好調」の「躁」状態の訪れる周期、それぞれの振幅、深さがどれほどのものなのかを探っておられるような質問が多かったんだけど、実のところもう何年もの間「躁」であった記憶はまったくなかった。
「人としゃべっていて、相手がとろくてとろくてしょうがない、といらいらしたことはありませんか?」「あ、ありますあります、しょっちゅうあります!」「議論して、喧嘩になってしまったことは?」「はぁ、前はよくありましたね。」
そうか、これが「躁」の症状だったんだ。相手がとろく感じられるのは自分の頭がいいからだと思っていたわけだから、それが誰にでもある病気の症状だったというのはちょっとショックだったかもしれない。


龍宮城だより