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Illness,
Not As
Metaphor
「バーマン」っていう長毛の愛玩用の品種があるんですが、その血をひいているんでしょうね、もとは高価な飼い猫だったはずだ。目の周りと足先が茶色というそのデザインと、どこかコミカルな表情から「たぬき」という名前になった。
耳がいいみたいで、私たちの車が着くと真っ先に駆け寄ってきて身体をこすりつけてきます。
一番のお気に入りだったが、他の猫と一緒に飼うことは出来ないことになってしまった。風邪の症状がいつまでたっても治らず、鼻をぐすぐすさせているので病院で検査をしてもらったら、FIV(猫免疫不全ウィルス感染症・猫エイズ)と猫白血病ウィルス感染症の両方に罹っていました。
FIVの方は現在までのところ治療法はなく、またワクチンなどの予防方法もない。主に、オスどおしのテリトリー争いの喧嘩のときなど、傷口から感染するらしい。「たぬき」も弱いけど、オスです。人間のエイズの場合もそうなんだろうが、単純な身体の接触や食器を共用するという程度のことではうつらない。
白血病の方は、ワクチンによって予防できる。一方で唾液や鼻汁、よだれなどの体液から感染する。
動物を飼いはじめて一年にもならない初心者だから、昔のことはよく知らないが、最近では猫を「放し飼い」にしておくということがほとんど不可能なのは、こんなたいへんな病気があるからでしょう。
猫エイズや猫白血病などの感染の有無は血液検査によってわかります。ちなみに私がお世話になっている動物病院では、検査料は5000円です。
同じ室内で他の猫と一緒に飼うことは出来ないし、完全に隔離できるような部屋もない。野良のままで放っておくのは、「たぬき」にとっても、他の野良達にとってもよくないのだけれど、仕方なかったですね。
ものすごく意地汚いくらいの食欲が救いです。鼻炎がひどくなったりして状態が悪くなる毎に、病院に連れていって、点滴を入れてもらったり、注射をしてもらったりすることにしました。「インターフェロン」という、人間のガン治療にも使うんでしょ?そういう薬を処方してもらって、これを目と鼻に垂らす。ものすごく嫌がって爪で引っかかれますけど、これで身体の免疫力が回復するのだそうだ。
なにより「たぬき」はここで他の野良達と一緒に暮らしているのがとても好きみたい。あとどれぐらい生きられるかわからないけど、せいぜいおいしいものをたくさん食べて、幸せな気持ちでいて欲しいですね。
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龍宮城だより