1. まず、

      正数ε'に対して、
      nN1のとき、|an-a|<ε'となるN1が存在し、
      nN2のとき、|bn-b|<ε'となるN2が存在する。
      n>max(N1,N2)のとき、|an-a|・|bn|+|a|・|bn-b|<ε'(|a|+|bn|)
      ここで、ある正の定数cに対して、nが十分大きければ、|bn|<|b|+cとすることができれば、上式は、
      n>max(N1,N2)のとき、|an-a|・|bn|+|a|・|bn-b|<ε'(|a|+|bn|)<ε'(|a|+|b|+c)
      となるから、改めて、ε=ε'(|a|+|b|+c)とおきなおせば、式がわかりやすくなる。すなわち、
      となるが、問題は、正の定数cの大きさがわからない、というところにある。
      cがかなり大きければ、N2よりずっと小さなnで|bn|<|b|+cとできるが、
      cが小さく、ε'よりさらに小さくなってしまえば、N2では|bn|<|b|+cは成立しない。
      そこで、次のような工夫をする。つまり、はじめから、ε'を、
      cのうち、より大きくないもの、すなわち、
      と、定義しておくのである。
      以上の工夫を踏まえて、答案を書き直すと、

      まず、

      正数ε、および正数cに対して、
      nN1のとき、|an-a|<となるN1が存在し、
      nN2のとき、|bn-b|<となるN2が存在する。
      n>max(N1,N2)のとき、|an-a|・|bn|+|a|・|bn-b|<(|a|+|bn|)<(|a|+|b|+c)=ε
      これは、nN=max(N1,N2)のとき、|anbn-ab|<εとなることを意味している。
      すなわち、

      cは、正でありさえすれば何でもよい、たとえば、1でもよいから、次のようにも書ける。

      まず、

      正数εに対して、
      nN1のとき、|an-a|<となるN1が存在し、
      nN2のとき、|bn-b|<となるN2が存在する。
      n>max(N1,N2)のとき、|an-a|・|bn|+|a|・|bn-b|<(|a|+|bn|)<(|a|+|b|+1)=ε
      これは、nN=max(N1,N2)のとき、|anbn-ab|<εとなることを意味している。
      すなわち、

前のページ次のページ補遺、高木貞治による証明