マクア渓谷の演習に関する環境アセスメントへのご意見への回答・アメリカ合衆国陸軍からの手紙
以下の文章は、ハワイ・オアフ島マクア渓谷での実弾演習再開に向けた陸軍による「環境アセスメント(EA)」に対して「意見書を送ろう!」というキャンペーンに参加した方に送られてきた、在ハワイ合衆国陸軍司令部からの手紙の一部です。
参考:
マクアからの呼びかけ
マクア渓谷の文化小史
陸軍省
在ハワイ合衆国陸軍司令部
ショーフィールド駐屯地、ハワイ州96857-5000
2000年12月8日
司令官室
ご意見をお送りいただいた皆様
マクア陸軍保留地及びPFCピリラ・アウ射爆場施設での通常演習にかかる「追加的環境アセスメント(SEA)」へのあなたのご意見をお寄せいただいたことに感謝します。私たちは、SEAに関する公聴期間にご意見を提供いただいたすべての方々に、挙げられた問題点のすべてを公開するために、寄せられたすべてのご意見をグループ化し、ご意見とそれに対するお答えの要約の文書を作成しました。この要約はこのお手紙に同封してあります。お答えを作成するにあたって、私たちはすべてのご意見を慎重に検討し、必要があればSEAに変更を加えました。みなさんからお寄せいただいたすべてのお手紙やその他の形態によるご意見は、同封するご意見と返答の要約とともに、SEAの最終報告書に付録として添付されます。
SEAの最終報告はまもなく完成し、その報告書は、ワイアナエ公共図書館、パール市地域図書館、ハワイ州立図書館で閲覧できます。SEA最終報告およびその公聴期間に関するその他の情報はホノルル・アドバタイザー紙、ホノルル・スター・ブレッティン紙および州環境管理事務所のニューズレター「環境報告」に掲載されます。
貴重なご意見に対して重ねてお礼申し上げます。御質問等がございましたら、どうぞご遠慮なくわれわれの全国環境政策法担当官ピーター・ユー(656-2878内線1051)にお問い合わせください。
ウィリアム・R・プットマン・Jr
合衆国陸軍大佐・司令官
付録 H:
マクア軍保留地に関する追加的環境アセスメントへの御質問に対するお答え
- はじめに
マクア軍事保留地における通常演習に関する「追加的環境アセスメント(SEA)草案」は2000年9月23日に公開された。ワイアナエ陸軍休暇施設において2000年9月25日に公聴会が開催された。この公聴会の主要な目的はSEA草案が公衆に公開されていることを周知することである。それに加えて公衆に対し意見書の提出にあたって役だつよう作成過程を公開し質疑に応じることである。第二回の公聴会が、第一回の参加者からの要望により同じ場所で10月11日に開催された。この第二会の公聴会の目的はさらに公衆に対する情報提供の機会を深め、第一回の公聴会で提起された質問に回答し、持って地域の人々が有効な意見書を作成できるようSEAへの理解を深めていただく点にあった。
第二回の公聴会を通じて、口頭での意見提出への要望があった。これらのご意見は聴取され、以下の回答に含められている。これらの公聴会での参加者の要望により、2000年10月23日をもって終了する予定であった公聴期間は2000年11月6日まで延長された。
いかに掲載するのはみなさんから寄せられたご意見の中で表明された問題点、懸念などについて、またこれに対する陸軍のお答えを要約したものである。
- 1. マクアを守れ、爆撃を止めろ!
船舶及び航空機からの爆撃演習がマクアにおいて過去に実施されたことがありましたが、今回陸軍は「活動予定」の中でそのような活動を提案しているわけではありませんし、将来爆撃を再開する計画を持っているわけでもありません。マクアで使用される予定の兵器はSEAの表2−1に挙げてあります。「活動予定」は実弾演習の再開を求めているだけであり、しかも環境上のリスクを軽減するため低レベルでの演習を求めているのです。現行の自然及び文化的資源保護及び山林防火管理などの環境プログラムは、希少な種や天然の動植物や文化財をよりよく保護するために拡張して適用されます。
- 2. なぜ陸軍は「環境アセスメント(EA)」でなく「環境影響報告(EIS)」を行わなかったのか?
陸軍がそのマクア軍事保留地における演習の可能性を検討するにあたって「環境アセスメント」を選んだのにはたくさんの理由があります。陸軍は1998年にマクア軍事保留地における演習を停止し、軍はマクア渓谷の環境や文化財を保全するためにいくつかの追加的な施策を取りました。これらの施策には、絶滅危機種の保全のために合衆国漁業及び野生動物庁との連携をとること、およびいかなる原因による山火事からもマクア渓谷を守るために火災の原因を減少、もしくは根絶するための山林防火管理計画などが含まれています。また陸軍はハワイ州歴史保護部、史跡保全諮問委員会、ハワイ人問題担当省、ワイアナエ地域の代表との協議の上、文化財保護と管理のために全国史跡保護法の下での「合意計画」を進展させてきました。
陸軍が連邦、州の各関係機関との連携の下、マクア渓谷の環境及び文化財保全に関する包括的なプログラムの実施によって、その豊かな環境と資源を保全し、演習による重大な悪影響が生じないよう保証することができるだろうというのが陸軍の意見であります。陸軍は、演習が実施されている1034エーカーの通行可能地域のみならず、4190エーカーのマクア軍保留地全域について、これを保全し維持するためにできる限りの負担の軽減を行う努力をしています。
- 3. オアフ島リーワードの地域の人々の参加が不十分ではないか
陸軍はSEAの実施に先立ち、またその進行中を通して、現下のマクア問題に関する地域の人々の実質的な参加ができるよう努力してきました。マクアにおいてオープン・ハウスを開催しましたし、ワイアナエの海岸では先住ハワイ人の人々と文化財保護プログラムの発展に資するために集まりを持ち、数々の報告記事を発表してきました。陸軍公共関連オフィスは地域協力プログラムを実施してきました。
2000年9月25日、10月11日にはSEA草案の提出にあたりヒアリングを行い、もって皆様のご意見や懸念が表明され、これらがSEAの進行に反映されるよう努力してきました。
- 4. 地域の人々はマクアの文化財へのアクセスを拒否されている
陸軍はリーワード地域の先住ハワイ人コミュニティーと2年間以上にわたって協力体制を取り、ウカニポ・ヘイアウへのアクセスができるようにしてきました。ヘイアウの管理の協力体制に関する試験的な合意も2000年10月12日に交わされました。
そればかりでなく、マクア内部の文化財を見学するツアーも行うことができます。文化財調査も現在進行中ですし、それら文化財の特定のために地域の人々に立ち入っていただいています。マクア全域に不発弾(UXO)が残留するため、全施設に一般の人々が無制限に立ち入ることはできません。
現在のところマクア軍保留地内の不発弾の量についてはわかっていません。陸軍は過去において、マクア渓谷の一部でこれらの不発弾を除去する作業に着手したことがありました。しかしながら依然として不発弾がマクア軍保留地内に残っていることを私たちは認めなければなりませんし、兵員並びに一般公衆の安全を確保する義務があることを認識いたしております。
- 5. SEAは地域の価値体系、ハワイ人の集会の権利、宗教的実践及び神聖な場所についての十分な検討を行っていない
SEAはこれらの情報を盛り込むために改正されました。
- 6. SEAは(演習に伴う)交通量の増加、地域を通過する弾薬輸送、地域や学校の安全など、地域の人々の懸念に十分に答えていない
地域を通過する危険物質の輸送については、輸送される兵器の種類に応じた安全基準を厳格に遵守して行われます。マクアに出入りする陸軍の移動は最小限のものとなります。
- 7. 陸軍はマクアにおける文化財、宗教的・文化的実践について黙殺しているか、もしくは軽視している
(SEAの)文化財に関する章はこれらの懸念を盛り込むために改正され、拡大されました。さらに、マクアの文化財に関する調査が現在進行中であり、この調査の結果は完了次第地域の人々に公開されます。
- 8. 陸軍はマクアを地域の人々に返還すべきだ、賃貸借契約失効にあたって土地を返還するに先立ち、浄化作業に着手すべきだ
マクアからの最終的な返還という問題は今回のSEAに盛り込まれる議題として適切なものと考えません。陸軍はマクアの土地を使用する必要性及び法的権利を有しています。合衆国政府はもはやマクアを必要としないという時が来ればその時点で、返還及び浄化の問題は別個のNEPA文書の議題とされるでしょう。
- 10. マクアを浄化せよ
マクアの浄化は演習場としての使用を継続しながらでは実現できません。陸軍はマクアでの演習が兵員にとって安全であり、かつ公衆および環境全般を守るものであるよう努力をしています。マクアからの最終的な撤収という問題は今回のSEAに盛り込まれるべき適切な議題ではないと考えます。陸軍にはマクアの土地を使用する必要性並びに法的権利があります。合衆国政府がもはやマクアの土地を必要ではなくなる時がくれば、返還および浄化の問題が別個のNEPA文書によって取り上げられるでしょう。
- 11. 行動計画によってマクアの絶滅危機種の生息が危機にさらされる。
訓練の限定的開始にあたっては、付加的な限定条項、山林防火計画、絶滅危機種安定化計画などに基づく施策が実施されます。これらの施策に基づき合衆国漁業および野生動物庁は、絶滅危機種の持続的な生息は脅かされないであろうとの見解を示しています。これに加えて天然資源管理および生物種安定化計画は、全ての絶滅危機種の保護のために強化され、この結果生態環境は現状よりよくなることが見込まれます。
- 12. 行動計画が実施されればマクアの土壌および水脈の危険物質が放置され、さらに流入される。
行動計画はより軽減されたレベルでの演習の再開であること、および1992年以降「廃棄物のの屋外における焼却および爆発(OB/OD)」が行われていないことに鑑みれば、マクアの土壌に、最終的にはその水脈に流入する危険物質の量は最小限のものにとどまると思われます。OB/ODが行われていた場所は通常、演習場内部で最も高レベルの汚染が生じる場所です。かつてOB/ODが行われていた場所で採取された土壌サンプルが、いくつかの物質に関して基準を上回っていましたが、コンピュータを用いたモデルによる試算では、これらの汚染物質が地表水を経て敷地境界に達するには少なくとも2000年を要するとの結果が出ています。しかしながら使用したモデルに関すしては様々なご意見があることを考慮しマクアの汚染に関する皆様の懸念に答えるべく、陸軍では環境庁や地域のみなさんとの協力の上、地表水の長期的なモニタリングを計画しています。陸軍ではまた旧OB/ODサイトから有害物質を除去する技術として「植物による環境回復(phytoremediation)」を採用することにていての検討を行う別個の環境アセスメント(EA)を準備しています。「植物による環境回復(phytoremediation)」は汚染物質を分解もしくは土壌から除去するために植物を利用しようというものです。この試験的プロジェクトはハワイ在来種の植物が利用可能かも検討します。
- 13. 「廃棄物のの屋外における焼却および爆発(OB/OD)」に関する環境アセスメント(EA)は公開されていない。
「旧OB/ODサイトでの『植物による環境回復(phytoremediation)』使用に関する試用プロジェクトEA草案」はすでに用意され、2000年9月8日から10月8日まで縦覧されていました。縦覧期間については州環境管理事務所(OEQC)のニューズレター「環境報告」に掲載されました。「EA草案」が縦覧できる旨は、行動計画に関する説明会のお知らせと同時にホノルル・アドバタイザー紙並びにスター・ブレッティン紙にも掲載されました。説明会はワイアナエで2000年9月11日に開催されました。「EA草案」はワイアナエ公立図書館および州環境管理事務所(OEQC)でも閲覧できます。EAの最終報告書も完了とともに公開される予定です。
- 14. ワイアナエの人々は軍の行動によって被った損害を補償されるべきだ。
陸軍は法令を遵守してマクアを使用しています。
- 15. 公聴期間は不適切であった。
「SEA草案」は当初30日間の公聴期間を設定して閲覧に供されました。公聴期間については州環境管理事務所(OEQC)のニューズレター「環境報告」、およびホノルル・アドバタイザー紙並びにホノルル・スター・ブレッティン紙にも掲載されました。そのご皆様からのご要望により2週間が延長されました。延長についてもホノルル・アドバタイザー紙並びにスター・ブレッティン紙に掲載されました。
...中略...
- 56. (陸軍の立場に対して)好意的と思われるご意見もたくさん頂きました。以下にそれらのご意見を要約して掲載します。
- もし陸軍がその兵員を適切に訓練できないのなら、軍はハワイ諸島を撤退しなければならないかもしれない。そうなれば経済的にも悪影響を受けるし、救助、消火、ヘリコプターによる患者搬送などの地域へのさポーと活動もなくなってしまう。ハワイにおける陸軍の駐留はアメリカおよび同盟国の太平洋地域における利益を防衛するためにも必須である。
- 「環境アセスメント(EA)」は地域の懸念に対して適切に答えているし、「絶滅危機種に関する法」や「全国環境政策法」にも合致している。
- 陸軍は環境への影響をなるべく軽減するために訓練活動を減らしてきている。
- ポハクロアや本土で演習をするのは、お金がかかりすぎる。
アイランド・カズンズ・ネットワーク / Island Cousins' Network